祗是未在

ソゾタケの仏像日記

専長寺(愛知県西尾市)―京都から遷されてきた美しく気高い阿弥陀如来座像

      2015/10/06

西尾というとまず浄名寺、というイメージだったが、他にも近くにいい仏像が安置されたお寺があるか調べてみたところ、名古屋仏像研究会のナルサワさんのサイトである仏像ワンダーランドで、いくつかのお寺がヒットした。このサイトは、滋賀県の仏像情報を中心に、中部の仏像の情報も充実している。

今では西尾市に編入されたもと吉良町の吉良吉田専長寺という寺があり、そこに美しい阿弥陀如来がいるということで電話予約をしてお邪魔させていだくことにした。

懐かしの吉良吉田駅の横の踏切を通り、件の腰を下ろしていておじいさんに叱られたホームをチラリと横目に見つつ、狭い路地へと入る。お寺の西側に広い駐車場があった。

山門

山門の脇には、砂岩質らしき材質で作られたと思われる石仏がたくさん並んでいる。

山門脇の石仏群

 

かなり溶けているような状態なので像容がよくわからないものもあるが、この像などはそれでも、おそらく馬頭観音であろうと推測がついたりして、それはそれで面白いな、と思った。

馬頭観音と思われる石仏

 

本堂はなかなか堂々たる建物である。隣の庫裏で呼び鈴を鳴らし、連絡していた者であることを告げる。
専長寺本堂

靴を脱いで本堂の中に入ると、仏像の詳細を見るまでもなく、圧倒的なオーラに一気に引き込まれる。

 

阿弥陀如来座像(鎌倉時代) 寄木造 玉眼 像高145.5cm

阿弥陀如来坐像

一目見て、これは地方仏師の作ではない、と感じる。明らかに雰囲気が違う。大きさ的には半丈六だが、かなり大きく見える。

阿弥陀如来坐像 右から全体

中品中生の印が珍しい。そして指の表現がとてもきれいだ。

中品中生の印

ご住職のお話を聞くと、やはりというべきか、この仏像はもともと京都にあったという。

源実朝の夫人である本覚尼が京都の遍照光心院大通寺の本尊として造立したもので、廃仏毀釈の煽りで京都誓願寺の末寺に安置されたままになっていたところ、こちらのお寺と縁があったことから、当時のご住職が許可を得て遷してきたそうだ。

阿弥陀如来坐像 正面

とてつもないパワーがある完成度の高い造形で、かなり引き込まれる。美しく、気高さもある。

阿弥陀如来坐像 正面

こう言っては失礼だが、まさか吉良吉田にこれほど素晴らしい阿弥陀如来坐像がいたとは本当に驚きだった。しかし、この後に訪問した金蓮寺にも国宝の弥陀堂があったりと、この一帯はかつては高い文化を誇っていたのであろう。

 

本尊に向かって左の間の阿弥陀如来立像も、外陣からだとやや遠くて詳しくはわからないものの、非常に秀逸である。

阿弥陀如来立像(鎌倉時代)一木割矧造 玉眼 像高90.8cm 市指定文化財

阿弥陀如来立像

近隣の東林寺(廃寺)というお寺の本尊だったそうだが、造形的にも様式的にも快慶の晩年の作風をよく表しているといい、足枘に銘はないものの、快慶に連なる仏師による作と考えられているそうだ。

 

専長寺のご住職はかなりのご高齢で、最近口腔内の手術をされたということでお言葉がハッキリしなくて申し訳ない、とおっしゃっていたが、この仏像に対する思いが十分に伝わって来た。話すのも大変だったはずだが、本当に丁寧に接していただき感謝である。

これほどの仏像をこの地で維持していくのは相当なご苦労もあることだろうが、不思議な縁でこちらに移ってきた仏像、これからもこの地で守り伝え続けてほしいと思う。

 

【専長寺(せんちょうじ)】

〒444-0516 西尾市吉良町吉田斉藤久100
TEL: 0563-32-0671(拝観要予約)
拝観料:志納
アクセス:名鉄西尾線 吉良吉田駅下車 徒歩6分
駐車場:寺の西側に広い駐車場あり(無料)

Loading
地図の中心へ
交通状況
自転車で行く
乗換

 - 鎌倉時代, 寄木造, 如来, 仏像, 快慶, 愛知県

Comment

  1. 伊熊泰子(いぐま・やすこ) より:

    初めてご連絡いたします。
    雑誌「芸術新潮」の編集をしている者です。
    ソゾタケさんの撮影された阿弥陀如来坐像がすばらしく、お願いしたいことがありまして、書き込ませていただきました。
    恐れ入りますが、私のアドレス宛てにメールをいただけるでしょうか。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

十二神将公開のポスター
大月市郷土資料館(山梨県大月市)―宝鏡寺の素朴な十二神将像

大月(おおつき)というと、東京から甲府盆地へ向かう途中で富士山方面への分岐点、と …

内陣
極楽寺(東京都八王子市)― 微笑んで来迎!歯吹きの阿弥陀如来

  多摩地区は戦災などの影響が都心に比べると少なかったことで、多くの仏 …

no image
三千院(京都府京都市下京区)― シャクナゲの咲き乱れる来迎の庭

大原は京都市街からは北東の方角へと一山越えたところにあるのどかな山村である。比叡 …

阿弥陀如来 上半身
安養寺【その2】(東京都日野市)— 藤原期の阿弥陀如来と不思議な大日如来立像

※安養寺【その1】はこちら 新選組の鬼の副長・土方歳三は、私の住む東京都日野市出 …

薬師如来 左側から
大日寺(鳥取県倉吉市)— 凜々しき阿弥陀如来と衣紋美しき薬師如来

倉吉には多くの素晴らしい仏像が遺されているということは調べていてよくわかったのだ …

蔵王大権現
下宝沢 蔵王大権現(山形県山形市)―3mを超す大迫力の蔵王権現

山寺から2つほど峰を超えた南側に下宝沢(しもほうざわ)という地区がある。ここはか …

三重塔
西明寺(滋賀県犬上郡甲良町)— 湖東三山開帳① 量感たっぷりな薬師如来立像

阿修羅ブーム以来かな、という気がするが、ここ数年来、各地で仏像をテーマにした特別 …

阿弥陀如来横顔
保昌寺(宮城県刈田郡蔵王町)―平泉文化に通じる丈六阿弥陀如来

  蔵王温泉では、「四季のホテル」というところに宿泊したが、とても良か …

入口の看板
南山城の古寺巡礼展(京都国立博物館)

京都というと祗園や清水、鴨川や御所、二条など、街の中心街の華やかなイメージが一般 …

左斜め前から
真覚寺 薬師如来倚像(八王子郷土資料館寄託)―白鳳時代の銅像薬師如来

多摩の仏像についても折に触れて書いて行きたいと思う。 東京都の西部・多摩地区は、 …