祇是未在

ソゾタケの仏像日記

中観音堂、長間薬師寺(岐阜県羽島市)―円空の出生地、温和な薬師如来とやんちゃな護法神

      2015/10/06

羽島円空記念館

年末はだいたい、実家である愛知県犬山市へと帰省する。年越しをしてすぐ東京に帰ってくる、というのがパターンだ。

帰省して翌日、実家からは1時間ちょっとで行くことができる岐阜県の本巣市にある谷汲山華厳寺へと向かう。

2011年6月に和歌山県那智で発願した西国観音巡礼を満願。西国三十三箇所だけではなく、坂東、秩父もすでに満願していたこともあり、これにて百観音を満願することができた。

百観音満願ご朱印

華厳寺は実家からは近いということもあって小さいころからよく訪れている寺だが、今回は西国満願、百観音満願を迎えた地ということで、いつもとは風景も違って見えるから不思議だ。

本堂裏の笈摺堂の横にある小さな祠に入っているこの仏像。以前より気になっていたが何という仏像だろう?おそらく手には巻物を持っていたとおもわれる天部像だ。なかなかイケメン。

華厳寺の天部像

その後、揖斐川に沿って羽島市へ南下する。最近興味が出てきた円空仏を巡ってみようと思ったのだ。

円空は自分にとっては比較的身近な存在だ。私の父は現役では自然系博物館の学芸員であったが、もともと仏像も好きで友人たちと研究会を立ち上げたりもしていた人で、当然私はその影響をまともに受けたということになる。その父は岐阜県羽島郡の出身ということもあってか、円空好きである。今ではもう巡ったりはしていないだろうが、犬山からも簡単に行ける飛騨地方の下呂や高山などに家族で行くたびに円空仏に接していたような曖昧な記憶が私にもある。何よりも、愛知県や岐阜県の一帯は、日本で最も多くの円空仏を保持している地域、ということもあるだろうか。

円空は羽島市の出身であることは知られている。中観音堂(羽島円空資料館)は円空の出生地という言い伝えがあり、ここには多くの円空仏が収められている。館に至る道筋や館の駐車場などには、毎年のフェスティバルの際に日本全国の円空ファンが刻んだ円空風な仏像が数多く並んでいる。

円空資料館前の円空風仏

中観音堂は円空資料館の隣の建物で、中に入るとたくさんの円空仏が目に飛び込んでくるが、とりわけ、真ん中にいらっしゃる大きな十一面観音像が目を引く。

十一面観音菩薩像

円空の微笑みは本当にやさしい。母の面影、とよく言われるそうだが、それも納得の暖かさだ。

十一面観音像

 

中観音堂には他にも多くの円空仏が収められている。

鬼子母神像

鬼子母神像

南無太子像

南無太子像

神像

神像

 

弁財天像

弁財天像

 

女性に人気という不動明王像

 

不動明王像

 

観音堂とつながっている円空資料館もなかなか見どころ満載だ。真ん中にある護法神像が、ちょっとぴちょんくんみたいでとてもかわいい。

護法神像

 

そしてこちらの意味不明な存在も護法神像だそうだ。

護法神像

 

こういう作品を見ると、円空はモダンアーティストとして今でも通用するととりわけ感じる。

 

中観音堂の世話役のおばあちゃんは、円空の観音の微笑みのごとく、本当に温かくて明るい人で、こちらにも元気をいただけた。みかんもいただいてますます心温まる。いつまでもお元気でいてほしい。

 

さて、中観音堂から1キロほどの長間薬師寺にも円空仏が多く遺されている。

長間薬師寺

ここの護法神像は2体並んでいる。実際には背面同士でくっつくようになっているそうで、1本の木から掘り出したものらしい。円空得意の手法である。

護法神像2体

ちょっとやんちゃな雰囲気が、また円空らしくてとてもかわいくていい。連れて帰りたくなる(笑)

護法神像(右)

左側の護法神像は特に有名で、新幹線の岐阜羽島駅前に、この像を象ったモニュメントがある。
護法神像

護法神という存在そのものもよく知らないが、円空はこの像をよく彫っている。円空資料館にあった異形の像のように、なんだかよくわからないから護法神としてしまっているのでは?と思うものもあるが、中観音堂の十一面観音のような”正統派”の美しく温かい雰囲気の仏像に対し、護法神像ではまさにモダンアート的な、挑戦的でジャジーな雰囲気のものがよく見られるような気がする。

中尊の薬師三尊像は、まさに正統派だろうか。

薬師三尊像

小さな窓から優しい3人のおばあちゃんが「あら、いらっしゃい」、と優しく迎えてくれたような雰囲気には大いに癒された。

他にも、円空特有の、台座部分に水が流れ落ちるような表現が見られる薬師如来像もある。

薬師如来像

お寺の方の話では、円空は母親を水害で亡くしていることから、こうした表現をしているのではないか、ということであった。

 

とてつもなくとんがったアートのような面白さと、誰もがほっこりとして微笑んでしまうような暖かさと、円空という人の表現する世界の広大さの、少しだけ片鱗を感じることができたのかもしれない。

 

中観音堂(羽島円空資料館) 

〒501-6319 岐阜県羽島市上中町中526
TEL:058-398-6264
拝観時間:9:00-17:00(月曜休)
拝観料:大人300円 中学生以下は無料
駐車場:あり(無料)
アクセス:名鉄竹鼻線羽島市役所前駅下車 羽島市コミュニティバス(南部線)へ乗り換え(9分)中区停留所下車 (徒歩1分)

長間薬師寺(ながまやくしじ)

岐阜県羽島市上中町長間893
TEL:058-398-6264(拝観要予約)
拝観料:志納
駐車場:数台分あり(無料)
アクセス:名鉄竹鼻線羽島市役所前駅下車 羽島市コミュニティバス(南部線)へ乗り換え(7分)長間停留所下車 (徒歩10分)

 

 - 江戸時代, 一木造, 円空, 地方仏, 仏像, 岐阜県

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

ほほえみの御仏展入口 写真
「ほほえみの御仏—二つの半跏思惟像—」展(東京国立博物館)

    2015年に日本と韓国が国交正常化50周年の節目の年 …

転読とのセッション
犬山薬師寺(愛知県犬山市)— ようやく会えた平安仏とグルーブ住職の寺テクノ法要

今回、年越しで帰省せずにこのタイミングで帰省したのは、この薬師寺でのご開帳に合わ …

影向寺
春の秘仏ツアー(神奈川県川崎市、横浜市、東京都足立区)

人気仏像ブログ「然るを訊く」の中の人としても知られる”地方仏ソムリエ …

三重塔
西明寺(滋賀県犬上郡甲良町)— 湖東三山開帳① 量感たっぷりな薬師如来立像

阿修羅ブーム以来かな、という気がするが、ここ数年来、各地で仏像をテーマにした特別 …

旧白米寺収蔵庫(奈良県磯城郡川西町)— 見事な衣紋の堂々たる地蔵菩薩

生まれてこの方、奈良に通うようになってからずいぶんと長い年月が経っているが、その …

no image
三千院(京都府京都市下京区)― シャクナゲの咲き乱れる来迎の庭

大原は京都市街からは北東の方角へと一山越えたところにあるのどかな山村である。比叡 …

菩薩像か如来像
東高尾観音寺(鳥取県北栄町)【後編】— ひしめく個性豊かな破損仏群

(前編よりの続き) 東高尾観音寺収蔵庫には、全部で45体もの破損仏が並べられてい …

千手観音 右側から
東高尾観音寺(鳥取県北栄町)【前編】— 妖しい魅力の千手観音立像と素朴で美しい十一面観音立像

東高尾観音寺は、大日寺のひとつ峰を越えた北側にある。車なら10分とかからない距離 …

黒田観音寺 右側面 上半身
「観音の里の祈りと暮らし展Ⅱ—びわ湖・長浜のホトケたち—」(東京都・東京藝術大学美術館)(前編)

滋賀県は仏像の宝庫であるが、とりわけ「湖北」と呼ばれる琵琶湖の北東地域一帯は「観 …

阿弥陀如来 左側から 横顔
中染阿弥陀堂(茨城県常陸太田市)— 素朴ながら堂々たる等身大の鉄仏阿弥陀如来

水戸藩であった現在の茨城県では、明治時代だけではなく、元禄期にも徳川光圀による神 …