祗是未在

ソゾタケの仏像日記

保昌寺(宮城県刈田郡蔵王町)―平泉文化に通じる丈六阿弥陀如来

      2015/10/06

 

鴫の谷地沼

蔵王温泉では、「四季のホテル」というところに宿泊したが、とても良かった。朝起きて、ホテルから明るい広葉樹林を抜けて少しだけ下ると、鴫の谷地沼という人工池がある。5月の新緑がとても美しく、近くでも遠くでも囀る野鳥の声と、いるだけで本当に癒やされる時間だった。

今日は蔵王山を超えて宮城側へと降りることにした。

蔵王山を横断するエコーラインを登る。まだ雪があちこちに残っており、スキーを楽しんでいる人たちもいた。

冬の樹氷と並んで蔵王を代表する光景である御釜に寄ってみた。

蔵王御釜

飛行機から見下ろしたことはあるが、こうして実際にこの地に立つのは初めてだ。よく似た火口湖のある群馬県の草津白根山に数年前に久しぶりに行ったが、あちらは火山活動の兆しがあったことから今はかなり遠くからしか見えないので、こうして間近に見下ろせるのは迫力がある。

蔵王山に縁がないわけではなく、大学生の頃、太平洋側の宮城蔵王えぼしスキー場に毎年のようにサークルの人たちとスキーに来ていた。

御釜を出て、その宮城蔵王側へとゆるゆると下っていく。

途中、荒涼とした溶岩原に蔵王寺というお寺があった。

もともとは蔵王山は役行者に関わる修行の場で、吉野から勧請した蔵王権現を頂上と麓に祀っていた。そこから蔵王という名前が山についたわけであるが、明治の神仏分離令で蔵王山にあった蔵王寺も廃寺に追い込まれた。その後、昭和に復興したのがこの寺だという。今の蔵王寺はほとんど人気もなく、周辺の景色と相まって非常に寂しい雰囲気を醸し出している。

カラフルな閻魔様が何だかかわいい。

蔵王寺閻魔大王

 

さらにエコーラインを下り、森林限界を越えて森の中へと入って行くと、道の脇に蔵王不動尊が現れる。

蔵王不動尊

コンクリート製の新しいもので、剣は地に刺し、髪の毛もラフな状態というちょっとモダンな不動明王。かなりカッコ良い。

蔵王不動尊

すぐ近くからは、はるか下に不動滝を見下ろすこともできる。

不動滝

私の愛車を見下ろす蔵王不動尊。

アクアと蔵王不動

さらに下ると小さな町へと出る。ここがこけしで有名な遠刈田温泉郷だ。街は静かで寂しい雰囲気だったが、本格ソーセージのお店でランチをとる。これはかなり美味しかった。

ソーセージランチ

麓まで降り、平地になったあたりで左へと曲がり、しばらく走って蔵王町平沢地区にある保昌寺に到着。

駐車場がかなり広く、一段上がったところにもさらに駐車場があるようだが、そこからはバイクを乗り回す音が響いてくるので近寄らないようにしておいた。バイク野郎たちも音はすれども姿は見えないが、それ以外にも、お寺にも人影は全くなくちょっとさびしい。

保昌寺山門

ただ、このお寺はとても立派で、仁王門も建っていて、顔は堂々たる忿怒相だが体がピンクな感じで頭には黄色いリボンがついたちょっとかわいい仁王がいた。

保昌寺仁王

 

本堂に向かって左側の奥に、堂々とした収蔵庫らしき建物がある。

収蔵庫

誰もいないし鍵もないのでそのまま中へと入り、丈六仏と対面する。

 

阿弥陀如来坐像 平安時代末期 総高3.79m、像高(髪際)2.88m

阿弥陀如来坐像

大きい。さすが丈六は迫力が違う。

もともとは平沢区の、その名も「丈六」という集落にあった阿弥陀堂にあったといい、奥州藤原氏が庇護していたようだ。

阿弥陀如来近影

中尊寺金堂の阿弥陀如来に似ているといい、時期も同じく、平泉文化に通じる造形ということになる。

阿弥陀如来 脚部

見るからに継ぎ接ぎで痛々しい雰囲気が伝わってくるが、かなりの破損がある状態だったようで、江戸時代に大きな補修を受けている。今では顔と胸板だけが当時のものだという。

顔はやわらかく優しく、浄土思想が伝わってくる像だが、横から見ると鼻は低く、彫りそのものは浅い。体躯の部分が後補なので衣紋はわからないが、定朝様をよく伝える仏像であったことだろう。

阿弥陀如来横顔

かつてはかなりの華やかな中で拝されていたであろうに、今ではこうして客仏のように静かに収蔵庫にひとりいらっしゃるというのも、時代の変遷を感じさせるものがある。

 

お堂の外にでると、まだまだ明るい西日が辺りを照らしながら、阿弥陀の背面に当たる西方の蔵王山へと傾きつつあった。

収蔵庫夕景

 

保昌寺 

〒989-0831 宮城県刈田郡蔵王町平沢諏訪舘28-1
TEL:0224-33-2061
拝観料:特になし
拝観:昼間は拝観できるものと思われる
駐車場:北側に広い駐車場がある。そこから1段上がったところにもある(いずれも無料)

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顔は面長で、頬はふっくらとしている。かなり暗いので肉眼ではなかなかよくわからなかったが、写真に撮って見てみると半眼であることがわかる。頭上の宝髻はかなり簡略化されており、冠を載せるためなのか後補なのかは不明である。唇はやや厚めでキュートな雰囲気が出ている。このあたりは観心寺像に女性を感じるのと同じなのかもしれない。