祗是未在

ソゾタケの仏像日記

冬の唐招提寺(奈良県奈良市)—和上の寺 新しく迎えたお身代わり像

      2015/10/06

 

東大寺法華堂の修理が終わり、今年は3年ぶりに12月16日良弁忌に良弁の念持仏であったという執金剛神像がご開帳になるということで、奈良へと行くことにした。

 

夜の諏訪湖SA

夜の諏訪湖SA

 

金曜の仕事が終わった後にそのまま東京を出発し、中央道を西へ。

夜10時くらいに名神高速道路の多賀サービスエリア(滋賀県)に到着。ここには宿泊施設があり、宿泊することができるのである。去年の秋に関西に行ったときもここで宿泊した。普通にビジネスホテル状態で、大浴場もあるのでなかなか快適だ。ただし、高速道路の中なので酒が売ってないのがちょっと残念?

 

朝の多賀SA

朝の多賀SA

朝出発して、そのまま奈良へと向かう。多賀からは1時間半くらいで奈良に着く。かつては名神経由で奈良へ行くとなると、京都東インターで降り、城陽市で渋滞にはまって大変だった、というイメージだったが、最近では京滋バイパス京奈和道ができてかなり便利になっている。

午後からは東京から新幹線でやってくる仲間たちと合流する予定なので、それまでの間、薬師寺唐招提寺へとお参りした。薬師寺には10月にも来ているのだが、病気平癒を祈ったことがあり、かなえていただいたのでお礼参りをした。

冬の薬師寺は10月以上に人がいない。冬の冷たい風が強くかなり寒い。しかし朝の薬師寺はとてもきれいだった。

薬師寺大講堂の鴟尾と鬼瓦

薬師寺大講堂の鴟尾と鬼瓦

 

その後、久しぶりに唐招提寺へ。

こちらも、時間のせいか薬師寺よりは多いものの人が少ない。でもこの寺は私にとっては思い入れのある寺であり、静かな境内をゆっくり味わって巡る。

幼少の頃より、鑑真和上の鉄の意志に対する尊敬の念は強い。当時の船はまさに箱を浮かべたようなもので、そんな船で荒波へと漕ぎ出でていくのは相当な恐怖であったことだろう。一時は海南島まで漂流しても、各地で技術を伝えつつ歩いて揚州まで戻り、高弟を亡くしたりしながらも、弟子に裏切られながらも、日本にやってきて戒律と、数多くの今にも生きる技術を伝えた。最近の研究では失明していなかったのでは、という説もあるが、いずれにしても尋常ではない苦労を乗り越えて念願を達成したその鉄の意志は本当に素晴らしい。そんな鑑真和上への尊敬から、私は子どもの頃から毎年のように開山忌の折に鑑真和上像を拝観に来ていた。

東京に移ってしまったのでなかなか来られなくなったが、いつ来てもここは本当にふるさとのような感覚を覚える特別な場所なのである。

 

唐招提寺金堂

唐招提寺金堂

朝の金堂。天平建築の金堂としては唯一遺る非常に貴重な遺構であるが、やはり古代の寺院建築はシンプルで良い

金堂の大屋根は元禄期に大幅にかさ上げされて大きくなったり、講堂の基壇が鎌倉期に高くなったりしているので、本当はそれも元の姿に戻してほしいなぁ、とも思うくらいだが、それはそれで歴史であるわけだからいいとも思う。何より我らはこの唐招提寺をずっと見てきたというのもある。

金堂の三尊(毘盧遮那仏坐像、千手観音立像、薬師如来立像 いずれも国宝)はやはり圧倒的だ。これほどの威容を誇り、そして天平時代作である三尊はどこにもない。中尊の毘盧遮那仏が東京にいらっしゃった(2006年)というのは、今考えてもすごいことだと思う。

平城宮の唯一の遺構でもある講堂も堂々たるものだ。

唐招提寺講堂

 

礼堂の屋根には古代瓦が使われている。

礼堂の古代瓦

 

今回、楽しみにしてきたことがある。それは開山堂に安置された鑑真和上像のお身代わり像を拝観することである。

鑑真お身代わり像

著名な国宝の鑑真和上像(天平時代)は開山堂のすぐ裏手にある開山御影堂にあり、東山魁夷画伯の壮大な障壁画に囲まれているが、1年で3日のみの開帳である。和上没後1250年を記念し、その複製が美術院で制作され、開山堂において常時公開されることになったというニュースはずっと追っていた。

開山堂は講堂と礼堂との間の北側、一段高くなったところにある。このお堂は昔からあり、私の両親の話では、かつてはこの中に鑑真和上坐像はあったという。そのお堂の前に「若葉して 御目の雫 拭はばや」という、和上の開山忌に訪れて目を拭くという法要を見たと思われる芭蕉の句碑があるので、少なくとも江戸時代でもそうであったのだろう。

その開山堂は小さなお堂であり、そこで常時公開とはどういう状態なのだろう?と思っていたが、開山堂の前に立って驚いた。開山堂そのものも大きく改修され、お堂の前面がガラス張りとなり、その中に鑑真和上のお身代わり像が鎮座していた。

正直なところ、お身代わり像は写真で見る限り、確かにかなりの作品ではあるけど複製でしょ?という思いはあった。しかしその雰囲気といいこの見せ方といい、その出来の良さといい、予想以上でかなり感動した

石段の下からも眺めることができるが、後ろ側の築地塀が切り取られて開山堂の敷地に入ることができ、すぐ近くまで寄って見られる。ガラスに反射防止がされているおかげで、晴天でもよく見えるように工夫されている。

 

開山御影堂の前を通って鑑真廟へと向かう。

唐招提寺を訪れると必ず御廟には行くが、今回はもうひとつ目的があった。鑑真廟の前にある灯籠である。

鑑真廟前の灯籠

私は来年秋に中国へ行くつもりだ。行き先は上海周辺と考えているのだが、うち1日を使って揚州まで足を伸ばそうと考えている。そう、鑑真が日本に渡る前に住職をし、中国での鑑真の人生に深く関わっている大明寺に行くためである。興福寺の僧であった普照と栄叡が揚州に入って鑑真を最初に訪ねたのも大明寺であった。

大明寺には現在、日本より送られた鑑真和上像のレプリカが境内の記念館に安置されているのだが、もうひとつ、当時の唐招提寺長老であった森本孝順師が自ら送り自ら火を点した灯籠が送られ、記念館の前に立っている。それはこの唐招提寺の鑑真廟前に立っている灯籠と同じもの。つまりあわせて一組になっているということである。来年、大明寺に行くにあたって必ずその灯籠も拝観したいと思っており、今回、和上のお墓にお参りするのと併せて、その灯籠も見ておきたかったのである。来年、大明寺に行きますよ、と和上に報告。

小学生の頃から歩き続けてきた、御廟から本坊前、そして戒壇への道を歩く。昔よりもずっと木が少なくなってかなり見通せるようになっていると感じる。冬だから葉が少ないというのもあるが、やはり木そのものが少なくなったと感じる。

唐招提寺境内の通路

唐招提寺境内の通路

 

最後に、唐招提寺のグッズ売り場へ。

前から気になっていた唐招提寺千手観音の光背をあしらったご朱印帖。カッコいい。

唐招提寺ご朱印帖

さらに今まではなかった新しい鑑真和上のお姿ご朱印もいただいた。

鑑真和上お姿ご朱印

 

話題になった唐招提寺制作の塗香(ずこう)ハンドクリーム

塗香ハンドクリーム

友人から依頼されていたので自分の分も併せて購入。ちょっと塗ってみたが、本当に塗香の甘い香りがする。

 

唐招提寺はいつの間にか商売上手になっていて、気づけばかなりの額を使ってしまっていたのであった。

 

唐招提寺

〒630-8032 奈良市五条町13-46
TEL:0742-33-7900
拝観時間:8:30〜17:00(入山は16:30まで)
拝観料:600円
新宝蔵:100円
特別開帳:毎年6月5,6,7日は開山忌として開山御影堂の鑑真和上像、東山魁夷作の障壁画を拝観できる(別途500円が必要)
駐車場:あり(有料500円)

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 - 天平時代, 建築, 仏像, 奈良県

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