置恩寺(奈良県葛城市)―絶妙なバランスで立つ凛々しき観音

藤原時代, 一木造, 菩薩, 仏像, 奈良県

2日目は4つの寺院を巡る。

まずは奈良盆地の南西、葛城山の山裾にある置恩寺へ。

奈良市街からは24号線と、今はまだ無料の京奈和道路の先行開通区間を通り、橿原市まで来て西へと方角を変える。左に大和三山を見ながら進み、當麻寺への道と同じルートで進むと山が迫ってくる。

置恩寺は當麻寺よりも南に離れた寺口という裾野の集落を抜けた上にある。

置恩寺外観

お堂の脇に車を停めて振り返ると、大和三山をはじめ、広々とした奈良盆地の南部を見晴かすことができる。

置恩寺からの奈良盆地

境内に入ると、なかなか時代を感じさせるお堂がいくつかあり、屋根などが少し傾いていて、30年前くらいの奈良のお寺を思い出させるものがある。有名な寺院はそんなことはなかったが、少し離れた寺院へ行くとどこもこんな感じだった。

葛城の山に抱かれた雰囲気がとてもいい。

置恩寺境内

その中にコンクリートでできたしっかりとした収蔵庫がある。

置恩寺境内と収蔵庫

 

十一面観音立像(藤原時代)像高172.0cm ヒノキ一木造 国指定重要文化財

十一面観音菩薩像全体

扉を開けた瞬間から、そのバランスには目を瞠った。不思議な立ち方なのだ。

十一面観音菩薩像斜めから全体

左足に重心を起きつつ、右足を少し曲げて体をくねらせて立っている。顔はしかしまっすぐ中央にある。少し真似してみたが、なかなか難しくてできなかった。

平安中期ということで藤原時代に入ろうという頃であろうが、足の衣紋には翻波衣紋の名残が見受けられる。

観音菩薩脚部の衣紋

この像は、そのスーパーボディのバランスの美しさもさることながら、何と言っても表情が非常に凛々しい。

十一面観音像 顔近影 正面

細面で眉の部分がキリリと上がり、目はややつり目でまっすぐ。唇は厚めの小さめ。鼻筋が通ったまさにイケメンだ。

十一面観音 顔近影 左側面

頭上面は後補らしいが、滋賀県の渡岸寺十一面観音像を想起させるほど大きい。主面は小顔ながら、この大きな頭上面がまた不思議なバランス感を創出しているようにも思う。

ほれぼれするような凜々しさである。

十一面観音 顔近影 左側面

観音にしか出せない水の流れるような立像の美しさであるが、この像はまた他とは違う独特な美しさを感じる観音であった。

お堂の中には三面荒神像もいた。玉眼で造形もかなりカッコイイ。

三宝荒神像

 

収蔵庫を出ると、寒い中、外で待っていてくださった地区長さんが「ウチの観音さん、きれいでっしゃろ?」と、穏やかながら誇らしげに話していたのが印象的だ。これからもずっとこの地区で守り伝え続けられていくことだろう。

山に抱かれたこの風土と、広々とした大和盆地を見下ろす風景、そしてこの美しい観音菩薩。心がしっとりと潤いを得るように洗われたような、そんな気持ちがした。

置恩寺前から空

置恩寺

奈良県葛城市寺口706
TEL:0745-48-2811(葛城市観光協会)
拝観:要予約
拝観料:志納
アクセス:近鉄御所線「新庄」駅下車 徒歩40分
駐車場:お寺周辺に駐車できる