正覚寺(奈良県橿原市十市町)―地域を守る穏やかでおおらかな大日如来

藤原時代, 寄木造, 如来, 天部, 仏像, 奈良県

大和高田から橿原市北部へと移動し、昼食をとるためにいったん箸墓の前にある三輪そうめん山本三輪茶屋へ。にゅうめんのセットをいただく。

正覚寺(奈良県橿原市十市町)―地域を守る穏やかでおおらかな大日如来

その箸墓と二上山のちょうど中間地点くらい、橿原市の十市町に正覚寺はある。このお寺は現在は地域の小さなお寺であり、この地区の皆さんが大切に管理されている。

お寺周辺は道も狭く駐車場もないのだが、電話をすると、世話役の方は「なんとか対応しますので」と言ってくださった。お寺の北側の路地まで行ってから電話すると、南側を走る太い道路側へ来てほしいと言われてそちらに回りこむ。すると、会ったことがあるわけでもないのに私たちの車を見つけて手を振る男性が道端にいらっしゃった。この寒い中で、3人もの地区の方が車のことまで含めて迎えてくださったのは本当に感謝だ。

挨拶を交わしてお寺へと続く畑の畔を歩く。白菜や唐辛子など、鍋に良さそうなものができている。

正覚寺へ畑の中を歩く

小さいながらもしっかりとした作りのお堂だ。銀杏の絨毯がきれいだ。

正覚寺

お堂を開けていただき中に入ると、一同驚きの声を挙げた。

大日如来坐像(平安時代末期)像高(髪際)118.5cm 県指定文化財

大日如来坐像

一目見ての感想は「大きい」ということだった。宝髻まで入れた総高は152cmということだが、もっと大きく見える

世話役の方もおっしゃっているように、大日如来は比較的小さめで華奢な感じの像が多い。それに比して、この像は半丈六で、さらに肉付きもよくとてもふくよかだ。

十一面観音像

もともとは近隣にあった十市御県坐神社の神宮寺大日堂の本尊だったという。神仏分離令でこちらに移ってきたということだが、破壊されることもなく、非常にツルッとしたきれいな肌で今も大切にされている。

大日如来坐像 顔

この像を見て感じるのは、本当に柔らかい、ということだろうか。表情がとても柔和で、なんとなく微笑んでいるように見える。先述の通り、身体の肉付きもよくふっくらしている。

大日如来坐像 智拳印

宝髻もなんだかやわらかい。リスのしっぽみたいだ。

大日如来坐像 横顔

 

大日如来の左右前には額に入った2枚の仏像の写真が飾られているが、これはもともとこのお堂に一緒にいらっしゃった地蔵菩薩立像天部立像の写真だ。現在は奈良国立博物館に寄託されているという。そういえばなら仏像館でお会いしたような気もする。

正覚寺本堂内

 

小さなお堂には、他にも数多くの仏像が並べられている。

牛がかわいい大威徳明王像

大威徳明王像

こちらにも置恩寺と同じく三面荒神像がいらっしゃった。

三面荒神像

 

そんな中で、とりわけ気になったのが厨子に入ったこの大威徳明王像だ。

大威徳明王像

大威徳明王は弓を持っているのは普通だが、仏像として作られているもののほとんどは弓を「持っている」状態になっている。しかしこの像は弓を思い切りよく「引き絞って」いる。

大威徳明王像

その造形もだが、表情もとてもカッコイイ。頭上の3面がその分、かなり省略されてしまっている。ちょっと省略しすぎでしょ、と思うほどで、一瞬、宝珠が並んでいるのかと思った(笑)

 

再び、大日如来の前に座って正対する。

大日如来坐像

写真で飾られている2体の仏像の他に、この大日如来も博物館へ出すように言われているというが、そうするとみんないなくなってしまう、2体の仏さんもできるだけ早くお堂をもっと大きくして帰ってきていただきたい、仏さんも帰りたがってるはず、とおっしゃっていた。この地区の皆さんがいかにこのお寺の仏像を大切にされているかが伝わってくる。

それにしても、この大日如来はなんとも暖かい気持ちにさせてくれる。

私らの思いを感じ取ってくださって微笑んでいらっしゃるんだと思っているのですけどね」と、少し照れたような表情でおっしゃっていたのがとても印象的だった。

 

正覚寺

奈良県橿原市十市町1007-1
TEL:0744-47-1315(橿原市教育委員会 生涯学習部文化財課)
拝観:要予約
拝観料:志納
アクセス:近鉄橿原線「新ノ口」駅下車 徒歩20分
駐車場:基本的にはなし(問い合わせ)