祗是未在

ソゾタケの仏像日記

安養寺 【その1】(東京都日野市)— 古刹に君臨するサタデーナイト毘沙門天

      2015/05/21

お正月早々のエントリということで我が家のお鏡さん。今年もよろしくお願いします。

我が家の鏡餅

私が現在住んでいるのが、東京都の西部、多摩地区の中ほどにある日野市である。ここは何と言っても新選組が有名であり、仏像好きならば高幡不動が真っ先に思いつくだろう。高幡不動の不動明王は藤原時代作であることからしてもかなりの古刹で、この一帯にはそれなりに昔から文化が根付いていた、ということを今に伝えている。

高幡不動から浅川を渡った北側の万願寺駅周辺、石田という集落には、新選組鬼の副長・土方歳三の生家があり(さらにキヨシローやトモカズも通った都立日野高校もある)、そこからすぐのところに安養寺はある。お寺の南側を国道20号線の日野バイパスが通り私も頻繁と通行するのだが、「毘沙門天王」と書かれた赤い幟がたくさん立っているのでいつも気になっていた。

各地にある「七福神巡り」であるが、日野市にも日野七福神がある。今年は自転車で巡ろうと思っていたのだが自転車を買うのを忘れていたので、とりあえず毘沙門天だけは拝観したいと思い、安養寺へと足を運んだ。七福神巡りの1月7日までの間は、毘沙門天を間近で拝観できるという。

お寺の境内にも駐車場があるが、そこが満車でも、すぐ近くに新しく広い駐車場ができたので安心だ。

安養寺の駐車場

駐車場からは公園を通り抜けるとすぐに参道へと到着できる。

安養寺入口

参道の突き当たりの門をくぐると本堂で、ここにも実は素晴らしい藤原時代作の阿弥陀如来坐像がいらっしゃるらしいが、残念ながら戸は固く閉ざされていた。

安養寺山門

その本堂への門の手前左に、コンクリートでできている真新しい薬師堂がある。七福神巡りはこちら、と書かれている。

薬師堂

戸をがらりと開けて中に入ると、正面に薬師三尊像、左に尊像、そして右にお目当ての毘沙門天が見えた。

薬師堂内部

 

薬師三尊像(薬師如来は江戸時代中期作)寄木造 (脇侍は平成時代作)

薬師三尊像

なんだか少年のようでもありおじいちゃんのようでもあるような雰囲気があって、薬壺というよりはお茶の湯飲みを大事に持っているような感じだ。近年の補修で玉眼を入れたという。

 

毘沙門天立像(藤原時代)寄木造 前後割矧 像高132cm 市指定文化財

毘沙門天像全体

一目見て、「何という腰のひねり!」と叫びそうになった。S字そのもので、これはまねできないレベルだ。ジョン・トラボルタくらいしかできないだろう。サタデーナイトフィーバーを思い出すスタイルである。

毘沙門天 左斜め前から

よく見ると、体部、脚部には荒れが見られるが、シリコン等による補修が入っていることがわかる。安養寺の冊子にも特に書かれていないのでわからないが、腕と頭の状態が、体部と比べて明らかに違っている。少し調べてみると、やはり肩から先の両腕と頭部が近年の後補なのだそうだ。完全に首を欠損していたというなら仕方ないのだが、補修前の状態がどんな感じだったのかを知りたいところだ。

しかし後補部分も違和感なく作られている。

毘沙門天 正面から近影

それにしても、このひねりは当初のものであるわけで、かなりすごい表現である。突き出す形の左腰が女性的ですらある。

毘沙門天増 斜め前から全体

おなかの獅子噛(しがみ)の表現もなかなかよくできている。

獅子噛の上に腹帯のようなものを巻くタイプであるが、このあたりの造形論については全く知らないので、今後調べていきたい。

獅子噛

足元の邪鬼も当初像ということだ。両肘をついて両腕を顎に当てるタイプ。顔の眉のあたりの盛り上がりや鼻、唇など、ゴリラやチンパンジーにしか見えない。邪鬼は人間ではないものを造形することが多いが、ここまでサル顔にするのは珍しい。

邪鬼

安養寺には他にも多くの仏像を安置しているといい、「安養寺の諸仏」という冊子も販売されていた。その中で大きく気になったのがこちら。

大日如来立像

大日如来立像というのは聞いたことがない。江戸はいろいろな仏教文化があるのでそうしたものの一つなのかもしれないが、これはいつか拝見させていただきたいものだ。安養寺本尊の阿弥陀如来も素晴らしいので、拝観については今後また情報を集めようと思う。

多摩地区にもいろいろと興味深いお寺がたくさんあるようなので、少しずつ情報を集めて拝観してこちらのブログで紹介していきたいと思う。

 

安養寺【その2】はこちら

 

【田村山安養寺(たむらさん・あんようじ)】

〒191-0024 東京都日野市万願寺4-20-8
TEL:042-581-3624
拝観:毘沙門天は1/1〜1/7の日野七福神巡りの際に薬師堂にて拝観可能 それ以外は不明
拝観料:なし
アクセス:多摩モノレール万願寺駅下車徒歩5分
駐車場:境内と公園の向こう側に専用駐車場あり(無料)

 - 藤原時代, 寄木造, 天部, 地方仏, 東京都, 多摩地区

Comment

  1. 迦楼馬 より:

    いいですね~!毘沙の腰が凄いですね~
    この腰つきはたまらんです。
    この毘沙門天を見仏する みうらじゅん&いとうせいこう両氏のコメントを聞きたい(笑)
    腰の捻りを、これでもかと絶賛する両氏の姿が浮かんできます(笑)
    みうらさんが喜んでサタデーナイトフィーバーだと言いそうww

    大日如来立像・・・
    あるんですね
    初めて見ました。

  2. ソゾタケ より:

    >迦楼馬さま

    いつもありがとうございます!迦楼馬さんのブログもいつも楽しみに拝見させていただいています。

    MJ&せいこう師にはぜひ日野を訪れてもらいたいですねー。このお寺は他にもいろいろと仏像が
    ありますし、日野には著名な高幡不動尊もありますので、TV見仏記の関東編をスタートしてもらって、
    多摩地区を特集してほしいですw

    大日如来立像はちょっと謎ですよねw 江戸期のバリエーションに富んだ謎の仏教スタイルの一つかなぁ、
    という気もしますが、確かこの本には鎌倉時代作、と書かれていたような気もするので、ますます
    よくわかりませんw

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

本堂
願興寺(岐阜県可児郡御嵩町)— かつての繁栄を物語る素晴らしき仏像群

岐阜県はかつては文化薫る街道沿いの街であった、と、このブログでも繰り返し書くとい …

no image
三千院(京都府京都市下京区)― シャクナゲの咲き乱れる来迎の庭

大原は京都市街からは北東の方角へと一山越えたところにあるのどかな山村である。比叡 …

十二神将公開のポスター
大月市郷土資料館(山梨県大月市)―宝鏡寺の素朴な十二神将像

大月(おおつき)というと、東京から甲府盆地へ向かう途中で富士山方面への分岐点、と …

赤後寺千手観音像
観音の里の祈りとくらし展 (東京藝術大学大学美術館)

湖北、という言葉を聞くと、いつもほんわか暖かいものが胸に広がる。かつては実家に帰 …

専長寺 阿弥陀如来坐像
専長寺(愛知県西尾市)―京都から遷されてきた美しく気高い阿弥陀如来座像

西尾というとまず浄名寺、というイメージだったが、他にも近くにいい仏像が安置された …

壽宝寺千手観音像
壽宝寺(京都府京田辺市)—昼と夜の顔をもつ真数千手観音

奈良滞在も3日目となり、いよいよ今回の奈良旅のメインである東大寺の良弁忌の日とな …

黒田観音寺 右側面 上半身
「観音の里の祈りと暮らし展Ⅱ—びわ湖・長浜のホトケたち—」(東京都・東京藝術大学美術館)(前編)

滋賀県は仏像の宝庫であるが、とりわけ「湖北」と呼ばれる琵琶湖の北東地域一帯は「観 …

阿弥陀如来 上半身
安養寺【その2】(東京都日野市)— 藤原期の阿弥陀如来と不思議な大日如来立像

※安養寺【その1】はこちら 新選組の鬼の副長・土方歳三は、私の住む東京都日野市出 …

図録表紙
「祈りの道へ -四国遍路と土佐のほとけ-」展(東京都・多摩美術大学美術館)①

  ※すべての画像は監修者よりの掲載の許可を得ており、複製、転載を禁じ …

執金剛神像
東大寺法華堂(奈良県奈良市)—紛う事なき塑像の最高傑作・執金剛神像

良弁(ろうべん・689-773)とは、東大寺の開山として知られる奈良時代の高僧で …