祗是未在

ソゾタケの仏像日記

犬山薬師寺(愛知県犬山市)— ようやく会えた平安仏とグルーブ住職の寺テクノ法要

      2014/03/19

今回、年越しで帰省せずにこのタイミングで帰省したのは、この薬師寺でのご開帳に合わせるということが主な理由であった。そんなことなの?と言われるかもしれないが、少しばかり重要な話なのである。

一昨年の5月、所要で実家に帰省した時、例によって時間を見つけて地域の仏像を拝観した。地元・犬山には国指定重要文化財の薬師如来坐像がいることは小さい頃からずっと知っていたのだが、ご開帳については何も知らなかった。サイトでも何も触れられていないこともあり、とりあえず聞いてみることにしようと電話をかけてみたが、残念ながら特に開帳日は定めていない秘仏である、ということであった。お参りだけなら、と仰って下さったので厨子の前までは入れていただき、庫裏でいろいろとお話しさせていただいた。

犬山薬師寺外観

その時、若い副住職が、先日も大学の美術史の教授からも申し入れがあったが断った、特別な日にしか開帳しない、ということをおっしゃっていて、ご自身も、最近ご結婚された時に初めてお目にかかったというほどなのだそうだ。帰る際、開帳することがあれば連絡していただけるということで連絡先を渡しておいたのだが、その年の秋に、私の携帯に薬師寺からの電話が来たのである。

私の訪問や大学の先生などからの依頼もあったということから検討し、年に1日、正月明けの大般若祈祷会の時(毎年1月第3日曜日)に開帳することになった、ということであった。大いに驚いたのだが、その最初の機会であった昨年のご開帳では帰ることが出来なかったので、今年こそは、と決めていたのである。もちろん私の依頼だけが理由ではないのだが、忘れず連絡いただいたことも併せて、ぜひとも訪れてお礼もお伝えしたかったし、幼少の頃から最も近くにあった重要文化財の薬師如来にぜひお会いしたいというのもあり、このタイミングでの帰省となったのであった。

犬山薬師寺の駐車場は100台も駐車可能なのだが、この日はさすがに車でいっぱいであった。葬儀会社との合弁で建て直した本堂は、お堂というよりも大きなビルのような感じだ。

お堂への階段

中に入るとすでにかなりの人が座布団に座って今か今かと待っている様子であった。右側には御札を申し込んでいる檀家の方の地域ごとの受付があり、地方のお寺の雰囲気がよく伝わってくる。

みんながそんなに薬師如来に会いたいと思っていらっしゃるのか、というとそれはわからないが、ここまでの人を集めているのは、まず最初に奉納イベントがあるからのようだ。毎年、音楽であったり太鼓であったりといろいろやっていらっしゃるようだ。今年は落語で、名古屋で活動されているという竜宮亭無眠(りゅうぐうてい・むーみん)という、まさにムーミンみたいな風貌のいわゆる”サラリーマン落語家“の方の落語でスタートする。上方落語で、わかりやすい構成に作られていたこともあり、気楽に楽しませていただいた。

そしてその後、法要が始まり、まず薬師如来のご開帳が行われる。ついにお目にかかる時がやってきた。小さな厨子の扉が開けられ、まだかなり遠いのだが薬師如来の手や膝が見えた。

開帳時の内陣

大般若会は、玄奘三蔵が持ち帰り高弟たちと4年もの歳月をかけて翻訳した600巻500万字からなる大般若波羅密多経を唱えるという大きな法要である。しかしあまりにも厖大な量であるため、すべてを読む(真読)というのは過去に数例のみで、一般的にはお経をアコーディオンのようにバラバラっとやる「転読」という方法で行われる。

大般若会は他でも目にしたことはあるが、じっくり全部というのは初めてかもしれない。いろいろな法要にも参加させていただいてきたが、この大般若会は他に比べて中央のご住職がお経を唱える時間が非常に長いな、と感じた。

そして「ダァァァァイ!!般若波羅密多経!」という突然の雄叫びのようなご住職の一声を皮切りに、脇にいらっしゃった副住職を初めとした僧侶の皆さんが長持ちのような箱から取り出した分厚い経典を、同じように「ダァァァァァァイ般若波羅密多経!◯巻◯◯◯(そのお経の巻の名前?)、無常やぁ!(と聞こえた)」と声を張り上げながらバラバラーっとそれぞれにやり始めた。パラパラときれいに収まっていくお経の様子は何だかとてもきれいだが、なかなかすごい光景でもある。しかしその直後、もっとすごい光景を目にすることになる。

ご住職はかぶっていた冠をはずすと、おもむろに座から降りて横にあるシンセサイザーの前へ。そして大きなヘッドホンをつけて音楽を奏で始めたのである。中央では4人の僧侶たちがバラバラーっとやり続けている中、ご住職は喜多郎っぽい雰囲気の音楽やビートの効いた曲を弾いたり、時にはシンセドラムを叩きまくったりするグルーヴっぷり。ノリノリだ。転読とも微妙にリンクさせているのがわかる。かなりカッコいい。

ご住職がシンセのところに移動する

ご住職がシンセに移動してヘッドホンをつけてノリノリ寺テクノ!

斬新というか、相当ショッキングな光景だが、これは別にふざけているわけではなく、ご住職は若い頃、ロックバンドをずっとやっていらっしゃった方だそうで、その後、僧侶となりこの寺の住職となった。いつもニコニコしたかなり元気なご住職に見受けられたが、数年前に大病で生命の危機というところまで行かれたそうだ。そうしたものもあって、音楽の喜びというものを法要とドッキングさせることで、法要に参加される方が元気になって、生きていることの喜びや、生きることの楽しさを感じられる法要にしたいと語っていた。

また、転読で短くなるとは言っても、600巻を4人で全部バラバラっとやるのには相当な時間がかかる。その時間、法要参加者を少し楽にしたい、という思いなのかもしれない。こちらとしては何とも微妙な気持ちになったが(笑)、楽しめたのは間違いない。新年最初の大きな法要であるからして、パワー全開のこうした法要で地域の方々が元気になるというのもいいな、と思った。

転読とのセッション

転読とのセッションはなかなか斬新で見応え十分!

 

法話も含めて2時間近くの法要が終わり、いよいよ薬師如来のお膝元へと進むことが許される。

 

薬師如来坐像(藤原時代)寄木造 像高82.6cm 国指定重要文化財

薬師如来坐像

お寺の許可をいただいて公式サイトの写真を転用させていただいているが、正直なところ、この写真では全く良さが伝わらないのが残念だ。実際にお会いするとなかなか男前の薬師如来であった。

82cmと小ぶりで衣紋の造形はかなり薄い。手を初めとして、相当な補修が入っていることがわかる。ところどころのはがれた金箔や漆なども後補であろう。目は後世に墨で書き込まれたような大きな目で、やや像の本来の美しさを損ねているようにも見える。偏担右肩にした衲衣の、左肩から右脇へと入る衣紋がやや堅い造形であるところに地方仏らしさを感じるものの、カーブそのものは美しい。全体のバランスは良く如来としてはややスリムな体型で、この写真しか見たことがなかったそのイメージとは大きく違ってカッコいい感じであった。

やや暗く高い位置ということもあり見えない部分も多いのがちょっと残念ではあるが、ようやく地元の至宝にお会いできたことの喜びが非常に大きかった。副住職にもしっかりとお礼をお伝えできて良かった。またぜひ訪れたいと思う。

 

犬山青海山 薬師寺(やくしじ)

〒4840081 愛知県犬山市犬山字薬師26
TEL:0568-61-2362
拝観:毎年1月第3日曜に大般若会があり、その法要中のみ開帳
拝観時間:法要が10:00ごろよりスタートし、2時間程度
拝観料:特に指定なし
アクセス:名鉄犬山線犬山駅西口より徒歩10分
駐車場:100台とめられる広い駐車場があるが、大般若会の時はかなり混雑する(無料)

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 - 藤原時代, 寄木造, 定朝様, 如来, 仏像, 愛知県

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