祗是未在

ソゾタケの仏像日記

西明寺(滋賀県犬上郡甲良町)— 湖東三山開帳① 量感たっぷりな薬師如来立像

      2014/05/09

阿修羅ブーム以来かな、という気がするが、ここ数年来、各地で仏像をテーマにした特別展であるとか、秘仏の特別ご開帳であるとか、そうしたものが頻繁に行われていると感じる。今までよく知らなかった仏像やお寺であっても、ついそうしたニュースに目が行ってしまうのは限定品に惹かれるのと同じ心境なのかもしれない。

とは言え、そうした特別効果というのはかなりの誘引力をもっているようで、最近ではどこの特別開帳に行っても大行列だったりする。そうしたことは、仏像のブームとともに、団塊の世代に時間ができた、ということも大きく影響しているのかもしれない。お寺もこのタイミングを大切にしているという感もある。

湖東三山マップ

琵琶湖の南東部には著名な3つの古刹がある。西明寺(さいみょうじ)金剛輪寺(こんごうりんじ)百済寺(ひゃくさいじ)であり、これらを総称して湖東三山という。

この湖東三山でも、この春に特別なご開帳が行われている。これは、かつての名神高速道路・秦荘パーキングエリアにスマートインターチェンジが開設され、その名も「湖東三山パーキングエリア」および「湖東三山スマートインターチェンジ」と命名されたことの祝福行事ということらしい。

それぞれのご開帳は、西明寺は住職交代で1度金剛輪寺は不定百済寺は55年に1度ということから、滅多にない三山一斉開帳が2006年にあったたばかりで、スマートインターチェンジで開帳しちゃっていいのかな?という気もしないでもないが、このスマートインターチェンジ開設は地元の悲願であったというから、よほどのことなのであろう。いずれにしても、私にとっては前回のチャンスを逃しているということもあり非常にありがたいことである。

 

ゴールデンウィーク前半の祝日を利用して長期の休みをとり、木曜の仕事が終わったその足で関西へと愛車を走らせる。最近はこのパターンが多く、その日のうちに滋賀県の多賀サービスエリアまで走る。ここではレストインがあり、泊まることができるためだ。関西を巡るにあたって、朝、彦根周辺から出発できる便の良さを利用するためなのだが、今回は、湖東三山パーキングエリアが多賀サービスエリアからすぐということもあってさらに便利なのである。

多賀サービスエリアのスタバで朝食をとって出発。西明寺まで30分もかからず到着するという、想像よりもはるかに近かったこともあって開門の8時よりも少し前に着いた。境内には参拝客は一人もおらず、掃除をしている方が境内をほうきではく音しかしない朝のすがすがしい雰囲気である。

西明寺入口

双子の鬼瓦がお出迎え。

双子の鬼瓦

国の名勝に指定されている蓬莱庭

蓬莱庭

石楠花(シャクナゲ)が満開だった。こうして見ると、ツツジの仲間だけあってよく似ている。石楠花は滋賀県花なのだそうだ。

シャクナゲ

苔むしたいい雰囲気の境内を抜けて本堂前へと上っていく。

苔むした境内

緑が多くとても気持ちがいい。本堂が見えてきた。

本堂へと至る

 

本堂のある壇へと上がると、回向柱に五色の布が結ばれているのが見える。本堂は鎌倉時代の建築で国宝に指定されている。その向こうには同じく鎌倉時代の建築で国宝に指定された三重塔が見える。

本堂と三重塔

三重塔は軒を空に突き刺すように勢いよく広げており、さすが国宝という堂々たる雰囲気だ。内部には見事な障壁画があり、大日如来坐像が安置されているという。土日祝の晴天の日にのみ別料金ながら開帳されるという。今日は快晴だが、残念ながら金曜日だ。

三重塔

本堂内に入ると、係員の方に中央へどうぞ、と案内される。焼香台の前では若いお寺のお坊さんがジャージ姿で読経しており、その後ろに座り、内陣の厨子の中へとゆっくりと目を向けた。

 

薬師如来立像(藤原時代)一木割矧造 像高161.4cm 国指定重要文化財

薬師如来立像

(西明寺販売の特別開帳期間限定写真集より)

幕の中にキラリと目の光る雰囲気の、あまりにも堂々とした雰囲気の薬師如来である。もちろん玉眼ではないのでキラリとはしないのだが、そんな感じがしてしまうほど神秘的な雰囲気が漂っている。はちきれんばかりの体や顔からは、内面から発される強いパワーを感じる。厨子に幕がかかっているために光背はほとんど見えないが、写真で見ると、種字が描かれた浮き彫りの見事な板光背らしい。

全くの素地で彩色がない。お寺の説明ではカヤ材ということだが、ヒノキ材という資料も見かける。造形的には藤原時代のようであるが鎌倉時代初期という説もあるようだ。

衣紋の彫りがなかなか素晴らしい。際立った感じの彫りではなく、重厚な雰囲気の彫りで、これも像の持つ雰囲気を作り上げている一因だろうか。写真ではわかりづらいが、左わき腹あたり、衣を折り返して中に入れている表現がかなりリアル。

両脇には月光・日光菩薩および十二神将二天像が並ぶ。

二天像(ここでは広目天と多聞天)(国指定重要文化財)は平安時代らしい雰囲気で大げさな表現のない質素な雰囲気がとても良い。とは言え、甲冑の造りは豪華で、あまり見たことがない独自性を感じる。腕の衣紋のカーブが何ともいいデザインである。

二天像

(西明寺販売の写真集より)

 

十二神将(県指定文化財)は鎌倉時代よりも時代が下るだろうが、なかなかよくまとまった造形であり、慶派的な雰囲気も感じさせてなかなか良い。本尊と二天に目を奪われてじっくり見ていなかったので、次回の楽しみとしたい。

内陣脇を通って裏の間に行くと、数多くの仏像が並んでいる。元三大師像もあり、角大師の御札があったのでいただいた。数々の仏像が並ぶ空間であったが、中央の清涼寺式釈迦如来(鎌倉時代)(国指定重要文化財)が気になった。

清涼寺式釈迦如来

(西明寺販売の写真集より)

清涼寺式釈迦如来は流水文で首の下から同心円上に水が流れ落ちるようになっていて、その点はこの像も同じなのであるが、腿のところの文様が気になるのである。模範像である京都・嵯峨野の清凉寺に安置されている釈迦如来立像(国宝)も、腿はこのように互い違いにシワが寄っている造形なのだが、こちらの像は衣紋のシワが唐草文様か勾玉のような造形になって何とも唐突な感じである。ちょっとおしゃれな飾りにも見えなくもない。

他にも阿弥陀三尊や不動明王および二童子像などなど、見所たくさんの本堂であった。最後に薬師如来の前でもう一度じっくりと拝観して手を合わせ、本堂を後にする。

本堂への上り道は庭を通る順路となっており、重要文化財の仁王門は帰りに通る形になる。仁王もなかなかいい。

仁王

 

明るい緑に包まれて、仏像も建物も素晴らしい、気持ちが洗われるようなお寺であった。

参道

 

※湖東三山一斉開帳は、平成26年4月4日(日)〜6月1日(金)

 

【龍應山 西明寺(さいみょうじ)

〒522-0254 滋賀県犬上郡甲良町池寺26
TEL:0749-38-4008
拝観料:600円 三重塔内部拝観は別途1000円
拝観時間:8:00〜17:00
アクセス:JR琵琶湖線河瀬駅からタクシー 特別開帳期間中の土日祝はシャトルバス運行あり
駐車場:受付のすぐ近くに数十台駐められる駐車場あり(無料)※名神高速を越える橋は1台しか通れないほど狭いので注意

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