祗是未在

ソゾタケの仏像日記

シャクナゲの室生寺(奈良県宇陀市)

      2015/09/10

五重塔とシャクナゲ

春は花の季節。巷にも花は咲き乱れ、気温も暖かくなり日差しも明るく、新たな生命の息吹を感じて何だか幸せになる季節である。

お寺というのはその性質故か、四季を通じていろいろな植物の風景を見せてくれるようにできているようで、春は桜、夏は青々とした緑、秋は美しい紅葉、冬は冬枯れの良さを感じられる。大自然に比べればはるかに狭い敷地内に、四季がたっぷりと詰まっているお寺がとても多いと感じる。

とりわけ、奈良や京都のお寺はそうした風景を四季を通じて楽しめるところが多い。奈良の山間部にある室生寺も同じである。

太鼓橋のたもとに咲くシャクナゲ

太鼓橋のたもとに咲くシャクナゲ

室生寺は私が最も好きな寺である。ここには弘仁時代に造られたあまりにも素晴らしい仏像たちが並び立ち、さらに山岳寺院ということで、小さな集落とともに、室生川のせせらぎの音と深い緑に包まれる。春の桜から冬の景色まで、いつ訪れても、仏像や建築とともに、その風景や空気に包まれて満足して帰ることができる。

そんな室生寺の四季の中で、最も著名なのはいつか、というと、それはやはり4月中旬から5月頭までの季節であろう。境内に数多く植えられたシャクナゲの花が一斉に花を咲かせるのである。このブログの前回と前々回のエントリはちょっと重い内容だったこともあるので、今回はシャクナゲの美しく咲き乱れる室生寺の様子を写真でお楽しみいただけたらと思う。

楼門をくぐると、いつもなら左手のバン字の池の前にいる虚無僧が、今日はその反対側のシャクナゲの花の前で尺八を吹いていた。この時はNHK奈良によるテレビ撮影が行われており、その演出の一貫として、室生寺の僧侶が虚無僧を紹介する、という展開になっているようであった。そのためにシャクナゲの前にいたのかもしれない。

虚無僧というと禅宗の一派である普化宗(ふけしゅう・明治政府によって消滅させられたため今は存在しない)の僧のことであり、よく知られる編笠かぶりで尺八を吹きつつ喜捨を募る半僧半俗の存在である。春と秋に室生寺にやってくると、このバン字池周辺で虚無僧の尺八を聞くことができるが、風情はあるものの、なぜ真言宗の室生寺で虚無僧が尺八を吹いているのかはよく知らない。

虚無僧

金堂への鎧坂もシャクナゲで彩られている。

鎧坂その1

 

鎧坂その2

金堂とシャクナゲ。

金堂とシャクナゲ

 

金堂すぐ下にはおなじみ、軍荼利明王の石仏がある。自然石を彫ったようななかなか趣のある石仏である。

軍荼利明王とシャクナゲ

 

金堂の廂。

金堂の廂

 

そして室生寺といえば、何と言ってもこの五重塔(国宝)が有名である。五重塔の周りにも多くのシャクナゲが植えられている。

五重塔

五重塔は平安時代に建てられたもので、総高16m強と、屋外に立つ五重塔としては最も小さい。東大寺大仏と同じくらいの高さである。

murouji10

 

1998年9月22日、台風の影響で周辺の杉の大木が倒れ、五重塔に向かって左後ろの角の屋根を払い落とすようにして破壊してしまった。ただ、破壊されたのは屋根先で、塔の根幹には被害がなかったことで2000年までに修復されたのが現在の姿である。かつての朱の塗装がややはがれつつあった姿に慣れ親しんできた者としては、修復後の姿は以前とは雰囲気が違うこともあり、新しく建て直した別のもののようにも見えてしまうのは、今のところはやむを得ないだろう。

五重塔周辺のシャクナゲ

五重塔石段周辺のシャクナゲ

 

山内のシャクナゲはどちらかというと濃いピンクか白に近い薄めのピンクのものが多いように見受けられるが、五重塔のすぐ前の株だけは、やわらかく淡いピンクをしていて、とてもかわいい。

五重塔前のシャクナゲ

五重塔前のシャクナゲ

 

石仏の周辺にも

石仏の周辺にも

 

昨年もほぼ同時期の土曜日に室生寺へやってきてシャクナゲの風景を楽しんだが、その時もそんなに混んでいなかった。今年は日曜ということもあって昨年より人は多いものの、そこまで混んでいない。駐車場も、近隣のどこかには駐められる。秋の紅葉も本当に素晴らしい室生寺だが、どちらかというとそちらの方が混んでいるかもしれない。

今年も、1年で最も華やかな室生寺の風景を存分に楽しみ、満足して室生寺を後にした。

五重塔

 

※注意※
2014/7/4〜8/26、仙台市博物館における「奈良・国宝室生寺の仏たち」展に数多くの仏像が出展され、不在となります。ちなみに、この期間は拝観料が一般で300円となります。

宀一山 室生寺(べんいちさん・むろうじ)

〒633-0421 奈良県宇陀市室生78
TEL:0745-93-2003
拝観料:一般600円
拝観について:金堂諸仏、弥勒堂諸仏、潅頂堂如意輪観音は常時拝観可(ただし金堂十二神将のうち2体は常時、奈良国立博物館へ寄託されている)※上記注意参照のこと
拝観時間:8:30〜17:00(4/1〜11/30)、9:00〜16:00(12/1〜3/31)
アクセス:近鉄大阪線室生口大野駅からバス(かなり本数が少ないので注意)
駐車場:周辺に有料駐車場が多数ある

地図の中心へ
交通状況
自転車で行く
乗換

 

 

 

 

 

 - 仏像, 奈良県, , 風景

Comment

  1. sayaka udashi より:

    とても美しいので、室生寺の特集でお写真をお借りしたいと存じます。お返事をいただければ幸いです。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

不動明王坐像
大聖寺(山梨県南巨摩郡身延町)―都の清涼殿に安置されていたという不動明王坐像

今年の夏の家族旅行は山梨県の南部。 山梨というと、前回のエントリでも書いた福光園 …

地蔵菩薩立像と室生寺光背
安産寺(奈良県宇陀市室生区)― 住民とともにある地蔵菩薩の心

奈良の中央の東部あたりの山間のお寺というと、長谷寺と室生寺がセットで紹介されるこ …

左斜め前から
真覚寺 薬師如来倚像(八王子郷土資料館寄託)―白鳳時代の銅像薬師如来

多摩の仏像についても折に触れて書いて行きたいと思う。 東京都の西部・多摩地区は、 …

転読とのセッション
犬山薬師寺(愛知県犬山市)— ようやく会えた平安仏とグルーブ住職の寺テクノ法要

今回、年越しで帰省せずにこのタイミングで帰省したのは、この薬師寺でのご開帳に合わ …

図録表紙
「祈りの道へ -四国遍路と土佐のほとけ-」展(東京都・多摩美術大学美術館)①

  ※すべての画像は監修者よりの掲載の許可を得ており、複製、転載を禁じ …

笹野大日堂 大日如来 側面
「祈りの道へ -四国遍路と土佐のほとけ-」展(東京都・多摩美術大学美術館)③

  ※すべての画像は本特別展監修者より提供を受け、掲載の許可をいただい …

屋根に止まったアオサギ
新薬師寺(奈良県奈良市)本堂の屋根で鳴くアオサギ 〜 人もまばらな室生寺へ(奈良県宇陀市室生区)

奈良旅最終日は、まず新薬師寺へ。こちらも執金剛神の前回のご開帳の時に訪れて以来な …

大日如来上半身
阿日寺(奈良県香芝市)— 恵心僧都生誕の地に広がる来迎ワールドと独特な魅力を湛える大日如来

恵心僧都・源信といえば、『往生要集』を著したことで知られる。この書は、後に法然や …

菩薩像か如来像
東高尾観音寺(鳥取県北栄町)【後編】— ひしめく個性豊かな破損仏群

(前編よりの続き) 東高尾観音寺収蔵庫には、全部で45体もの破損仏が並べられてい …

長谷本寺(奈良県大和高田市)ー長谷寺観音の当初の姿を遺すという美しい十一面観音

置恩寺から再び奈良盆地の中央へとくだり、大和高田市の市街地へと入る。 大和高田市 …