祗是未在

ソゾタケの仏像日記

唐招提寺 御影堂供華園—奈良と揚州をつなぐ清楚な瓊花(奈良県奈良市)

      2014/07/13

唐招提寺金堂

室生寺から奈良市へ戻り、久々の秋篠寺に寄ったあと、少しだけ時間が余ったので唐招提寺へ。

唐招提寺ではこの時期、瓊花(けいか)の花が咲き、公開されている。

瓊花は日本では限られた場所にしかないという。鑑真和上が日本に渡る前に住職をしていたのが、揚州(現在の江蘇省揚州市)にあった大寺院である大明寺(だいめいじ)である。揚州は隋の煬帝が開いた大運河の経路にあたり、揚子江との接点でもあり、当時は世界的な国際都市だったという。瓊花はその揚州の花なのである。

しかしいくら外国の花とは言え、隣の国の花が日本では限定された場所にしかない(唐招提寺、皇居、東大寺、飛鳥寺、岐阜県関市の薬草園「神薬才花苑」のみ)というのはどういうことなのだろう?普通であれば、九州あたりに何らかの分布があっても良さそうなものである。その理由は、隋の煬帝がこの花をいたく気に入って門外不出にしたためだという。

唐招提寺の瓊花は鑑真和上遷化1200年の昭和38年(1963年)に、記念事業で揚州から送られたものである。よく考えると、日中国交正常化は1972年であるから、その9年も前のことだ。関市の薬草園に贈られた瓊花も、大明寺の薬草園への資金寄付のお礼だったという。

瓊花の開花時期は4月中旬から5月上旬で、この期間にのみ、御影堂宸殿の脇にある御影堂供華園(みえいどう・くげえん)へと入ることが許される。

供華園

こちらから入り、御影堂宸殿の脇へと入る。御影堂宸殿には鑑真和上坐像と東山魁夷画伯の障壁画が安置されており、長年鑑真を尊敬してきている自分としては特別な場所だけに、開山忌以外の時期にこの区域内に入ることができるというのも何とも不思議な気持ちがする。

瓊花の看板

瓊花の花は、何も知らなければガクアジサイとしか思えないだろう。

瓊花その1

しかし係員の方の説明を聞くと、少し違うということがわかる。

まず、あじさいは低灌木だが、瓊花はしっかりとした木であること。背が高くて4mもの高さにもなるそうだ。

瓊花その2

あとは装飾花のガクがすべてきっちり5枚となっており(ガクアジサイは5枚だったり4枚だったりする)、ガクの形も違う。また、装飾花の数が、こちらもすべてきっちり8つになっている。

中国では「」と「」が吉祥の数であると言われて珍重される。この瓊花はガクの弁が「5」枚であり、さらに花の周囲のガクの数はちょうど「8」。これ以上ない吉祥の花ということなのである。

瓊花その4

さらにこの可憐な白さ、そしていくつかの花は開いていて香りたっていたのだが、その爽やかな香りがとても良い。

瓊花その5

 

いろいろな魅力がある花だ。煬帝が門外不出にしたくなった理由も何だかよくわかるような、そんな気がした。

 

ちなみに瓊花はスイカズラ科の花であり、ガクアジサイはアジサイ科もしくはユキノシタ科なので根本的に違う植物らしいが、スイカズラ科の花にはガクアジサイのような花を咲かせるものもあるのだそうだ。

供華園には他にも中国から贈られた珍しい植物が植えられている。

名前を教えてもらいながら失念してしまったのだが、枝が下がったようになる不思議な松。

枝が下がってつくという松

小さなかわいらしいサザンカの一種。

サザンカの一種

 

係員の方に10月に揚州の大明寺へ行く予定であることを伝えると、その頃はきっと瓊花の赤い実がなっているだろう、ということだった。唐招提寺・鑑真和上廟の前にある灯籠は、大明寺の記念館の前にある灯籠と対になっていることは以前のエントリで書いたが、この瓊花もまた鑑真を通して、奈良と揚州をつなぐものなのだ。10月がますます楽しみになってきた。

ちなみに、この瓊花の香りを味わうことのできる特製のお香が売店にて販売されている。煙もなく、消臭効果もあるというなかなかの優れものなので、興味のある方はぜひ。

瓊花のお香

 

唐招提寺 御影堂供花園(とうしょうだいじ・みえいどうくげえん)(南都七大寺には山号がありません)

〒630-8032 奈良市五条町13-46
TEL:0742-33-7900
拝観時間:8:30〜17:00(入山は16:30まで)
拝観料:600円
新宝蔵:100円
御影堂供華園「瓊花」特別開園」:毎年4月中旬〜5月頃 9:00〜16:00 (公開期間は花の状態による)
特別開帳:毎年6月5,6,7日は開山忌として開山御影堂の鑑真和上像、東山魁夷作の障壁画を拝観できる(別途500円が必要)
駐車場:あり(有料500円)

地図の中心へ
交通状況
自転車で行く
乗換

 - 奈良県, , 風景

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

長谷本寺(奈良県大和高田市)ー長谷寺観音の当初の姿を遺すという美しい十一面観音

置恩寺から再び奈良盆地の中央へとくだり、大和高田市の市街地へと入る。 大和高田市 …

笛を吹く飛天
薬師寺東塔水煙降臨展(奈良県奈良市)―長年見上げてきた”凍れる音楽”の頂

  家族での所用があり、普段は帰ることのないこの時期に実家である愛知県 …

不空羂索観音坐像
南円堂特別開扉(奈良県奈良市)―康慶による原点回帰の堂々たる観音

今年の春は奈良がアツい!興福寺がアツい! 普段は1年に1日のみ、10月17日にし …

鑑真お身代わり像
冬の唐招提寺(奈良県奈良市)—和上の寺 新しく迎えたお身代わり像

  東大寺法華堂の修理が終わり、今年は3年ぶりに12月16日の良弁忌に …

大日如来上半身
阿日寺(奈良県香芝市)— 恵心僧都生誕の地に広がる来迎ワールドと独特な魅力を湛える大日如来

恵心僧都・源信といえば、『往生要集』を著したことで知られる。この書は、後に法然や …

虚空蔵菩薩上半身
額安寺(奈良県大和郡山市)— 深い歴史を静かに物語る彩色美しい日本最古の乾漆虚空蔵菩薩

前回のエントリで取り上げた旧白米寺収蔵庫からは、北西に3キロほど、車で10分ほど …

シャクナゲの室生寺(奈良県宇陀市)

春は花の季節。巷にも花は咲き乱れ、気温も暖かくなり日差しも明るく、新たな生命の息 …

十一面観音像 斜め前からアップ
慶田寺(奈良県桜井市)—「いいお顔」の観音像のヒミツ

桜井市の北辺一帯は独特な雰囲気をもった空間だな、と子どものころからこの地を訪れな …

十一面観音近影
正楽寺(奈良県北葛城郡広陵町)―堂々たる像高2m超の十一面観音

法隆寺のある斑鳩から三輪山方面へと、現在の地図上でも斜めに走る道がある。これはか …

観音菩薩に後光が
西井戸堂妙感寺(奈良県天理市)― 天平時代の塑像の心木を収めた鞘仏

唐招提寺のあとは、近鉄奈良駅近くのさくらバーガーで、東京から来た友人3人と合流し …