祗是未在

ソゾタケの仏像日記

東高尾観音寺(鳥取県北栄町)【後編】— ひしめく個性豊かな破損仏群

      2015/03/07

前編よりの続き)

東高尾観音寺収蔵庫には、全部で45体もの破損仏が並べられていて圧倒されるが、前編でご紹介した印象的で引き込まれる大きな千手観音と、素朴ながらも美しい表情の十一面観音の2体の仏像の他にも、数多くの破損仏が安置されている。今回はその一部を写真にてご紹介する。

※写真の撮影には特別に許可をいただいています

前編の2体はともに国指定重要文化財であるが、それ以外にも、11体が鳥取県の保護文化財として指定されている。その11体は、もともとは峰を隔てた隣の大日寺にあったもので、信長による焼き討ちの際にこちらに移されたものだという。

 

※名称は原則として表示されていた札による

木造不動明王立像(平安時代)一木造 県指定保護文化財

不動明王像全体

 

不動明王像近影

典型的な大師様の不動明王であるが、前歯が長いのが印象的。

右隅には十一面観音兜跋毘沙門天吉祥天が並ぶ。

十一観音、兜跋毘沙門天、吉祥天

木造十一面観音菩薩立像(平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

十一面観音 近影

目が印象的だ。小さいが鋭い。まるで「天下御免の向こう傷」の三日月傷のような感じ。

 

木造兜跋毘沙門天立像 (平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

兜跋毘沙門天 近影

少し笑っているようにも見える。こちらも小さいながらも鋭い目が印象的。平成ノブシコブシの吉村にちょっと似ている。

 

木造吉祥天立像 (平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

吉祥天像 上半身

すり減ってはいるものの、深い瞑想を感じさせる表情だ。胸のあたりの荒れは酷いが、全体の造形は流れるようでとても美しい。

 

その3体の反対側の左隅には、地蔵菩薩十一面観音が並ぶ。
十一面観音と地蔵菩薩

 

木造地蔵菩薩立像 (平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

地蔵菩薩 近影

地蔵菩薩は僧形神として作られていた、とも言われるが、この像は、すり減った表情から、年老いた高僧のような独特な雰囲気を醸し出しているように感じる。かなり形式的で、まるで水紋のようではありならがらもY字紋が彫られているのもわかる。

 

木造十一面観音菩薩立像(二)(平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

十一面観音 近影

かなりすり減ってはいるが、目、眉、鼻の表情が見て取れる。頭上面の彫り出し具合の浅さがまた地方仏らしくて良い。1つだけ、表情がわかるのが何だかちょっと怖い。何だか山王信仰の烏帽子をつけた猿の表情にも見える。衣紋は古様で、胸前の条帛はやや複雑な様式になっている。

 

地蔵菩薩の手前には、四天王が並ぶ。

四天王

 

木造四天王立像(一) (平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

四天王(一)

神将像というより、おばあちゃんが語っているように見えてしまう愛嬌を感じる。

獅噛み

獅噛がすり減って、まるでガイコツに見える。

 

木造四天王立像(二) (平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

四天王(二)

こちらは目が大きくてギョロリとしている。

 

木造四天王立像(三) (平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

四天王(三)

すわ鉈彫りか?と思ってしまったが、そういうことではなさそうである。彫りの雰囲気が最もよく遺っていると言えるだろうか。なかなかのイケメン。

 

木造四天王立像(四) (平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

四天王(四)

体の大きな力強い武者の雰囲気だ。静かに、じろりと睨んでいるような感じ。源義経を八艘飛びするほどにまで追いつめた平家の猛将・平教経ってこんな感じだったのかな、と、なぜか思った。

 

木造四天王立像(五) (平安時代) 一木造 平安時代 県指定保護文化財

四天王(五)全体

四天王と言いながら5体あるのになんともズッコケてしまったが、もちろん五体一具ということではなく、いくつかの組の四天王像があったうちの5体ということなのであろう。実際、(一)と(五)は、(二)〜(四)の3体よりも一回り小さい。

伊豆の南禅寺(なぜんじ)の神将像(二天ではなく小さい方の神将像)や、立花毘沙門堂(岩手)の毘沙門天像を思い起こさせる雰囲気を持っていると感じた。

四天王(五)近影

 

その他の像は未指定であるが、うっかりひっかけて倒してしまいそうなほどの仏像が大量に並べられており、どの像も、破損はひどいものの、非常に独特で惹きつけられる雰囲気を感じる像ばかりである。

いろいろな仏像

神将像と見られる像。神将像

 

合掌している像。顔をひどく破損しているが、よく見ると合掌しているようであり、髪の毛を垂らしているように見える。神像の女神や、聖徳太子像のようなものだったのかもしれない。

higashitakao_43

 

並べられている仏像の中でも、最もボロボロにも見える神将像とみられるこの像であるが、非常に惹きつけられるものがあった。

神将像

ご住職の話では川に沈めて守ったものだそうで、腐食がかなり進んでしまったようだが、鼻や口がなくとも、まさに文字通り眉目秀麗な表情が見て取れる。

 

神将像と、如来像か神像とみられる立像。

神将像と男神像

右の像は表情もなかなかの迫力である。厳しい表情からすると、男神像なのかもしれない。

男神像

 

菩薩像如来像かわからないが、ここまで朽ちて割れても、この仏像が元々もっているであろう雰囲気というのは無くならないのだな、ということを感じて、感動を覚えた。

菩薩像か如来像

 

 

外へと出ると、まだまだ残暑厳しい中、ご住職が境内の掃除をしていらっしゃった。

最初はお怒りの様子だったので驚いた今回の訪問だったが、最後にはご住職に「あんたに会えてホントに良かったよ!」と言っていただいて、何だか泣きそうになった。

ご高齢で足も自由に動かないということで、維持していくことは本当に大変だろうと思う。ご住職の熱い想いとともに、これからもこのお寺が地域に大切にされ続けることを願ってやまない。

深く感謝の念をお伝えして、セミ時雨の緑に包まれたお寺を後にした。

お寺前のひまわり畑

【東高尾観音寺(ひがしたかおかんのんじ)】

〒689-2214  鳥取県東伯郡北栄町東高尾560
TEL:0858-37-5871 (北栄町役場生涯学習課)

拝観:要予約(ご住職は足が不自由なため、できれば個人拝観は避けたいところ。余裕をもって予約のこと)
拝観料:500円

駐車場:なし(お寺前の道路の路肩は広く、そこに駐められる ※要確認)

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