「祈りの道へ -四国遍路と土佐のほとけ-」展(東京都・多摩美術大学美術館)②

一木造, 寄木造, 如来, 菩薩, 天部, 神仏習合, 慶派, 博物館,美術館, 高知県, 運慶, 湛慶, 多摩地区

祈りの道へフライヤ

※すべての画像は本特別展監修者より提供を受け、掲載の許可をいただいています。(転載、複製は禁止です)

特別展公式サイト(監修者、学芸員のブログもご覧いただけます)
http://www.tamabi.ac.jp/museum/inorinomichihe/

 

よりの続き)

さて、いよいよ仏像ワールドである2階へと上がることにする。

2階も左右に部屋が分かれているのだが、1階と違ってまず目に飛び込んでくるのが上がった正面に投影されている映像である。これはこの特別展のメイキング映像で、どのように仏像や文化財が運ばれてきたのか、地域の皆さんがどれほど仏像を大切に身近に思っているのか、ということがとてもわかりやすく編集されている。こういう映像が特別展で流れるというのは見たことがない。ぜひご覧になることをオススメしたい。

さて、その映像に向かって左の部屋Dへと入ることにする。正面奥の笑い地蔵たちが一気に目を惹きつけるが、まずは手前側から見ていこう。

入ってすぐ右側の金林寺(こんりんじ)の破損仏たちがまず目に入ってくる。

金林寺は高知県東部、かなり深い山間部の馬路村にある寺院とのことであるが、そのお寺に眠っていた破損仏群を青木先生が発見した。

この仏像たちは3号像が83cmであるが、それ以外は像高が57cm〜64cmと小ぶりで、5体が並ぶと、何とも言えず愛らしい。ちなみに、この像を支えている現在の台座の部分は、かの松本明慶師の作なのだそうだ。

金林寺古仏群

金林寺 天部形立像(平安時代〜鎌倉時代) 像高56.0cm

金林寺 天部像

破損して荒れてしまってはいるものの、本来は憤怒相で怖い顔をしていたであろう神将系の天部像であることがハッキリわかる。左足下にだけ、岩座か邪鬼か、断片がくっついている。不謹慎かもしれないが、この状態になることで、むしろ愛らしい雰囲気が出ていると感じる。大きさもあるのかもしれない。

中央下あたりに木の節目がしっかりと残っており、神仏習合との関係もあるのかな、と思わせられる。

 

金林寺 菩薩型立像四号像(平安時代〜鎌倉時代) 像高64.0cm

金林寺 菩薩形立像4号像

図録の表紙にも採用されている足と両腕を欠損している菩薩立像である。表情は素朴で愛らしく、上半身に表面と思われる部分が遺されている。長い芋のような雰囲気になっているこの像であるが、実はこの仏像は「抱き仏」だったという。子どもがなかなか授からない女性が、この仏像を抱いて寝て、子どもが授かったらお供えと一緒にお寺にお返しする、という風習だったのだという。ずいぶんと荒れてしまってはいるお姿なのだが、そうした地域の人たちの願いと感謝がつまった仏像なのである。

 

北寺 菩薩形立(平安時代) 像高37.0cm

北寺 菩薩形立像

北寺からは3体の破損仏が出展されているが、これらの仏像はただの破損仏ではない。本体、光背、台座の蓮肉に至るまでが一木でできているのである。

まるで石仏のようで、こんな木彫仏は見たことがなく、大いに驚いた。高知県内の仁淀川町にもこのような例があるそうだが、平安時代の作というのは珍しいそうで、北寺にはなんと9体ものこうした像が伝わっているそうだ。寝転がっている状態も見せていただいたのだが、下から見ると、木の芯がちょうど中心に来ており、まさに一木、という感じでとても印象的であり、これもまた、木から掘り出すという込められた想いのようなものをとりわけ感じさせてくれた。

 

定福寺 不動明王坐像 像高20.5cm(江戸時代 享保六年)清水隆慶作

定福寺 不動明王坐像

定福寺は高知県北東部、ほとんど徳島県に近い深い山中にある。私も高校生の頃、祖谷渓や大歩危小歩危を旅したものだが、あの近くであると思うと、すごい山の中だな、と思う。

今回の特別展の中では、この不動明王像だけが異色な雰囲気かもしれない。江戸時代の像ということで、色合いも造形もやはり新しい雰囲気だが、小像ながらも迫力満点だ。顔がやや大きめで、後頭部の髪の毛の反り返りとしぶく光る目力が印象的な像である。光背部分に造像についての銘文が遺されており、鏡でしっかりと見ることができるように展示されている。

 

定福寺 木造地蔵菩薩立像(六地蔵)(笑い地蔵)(平安末〜鎌倉時代)像高111.9cm〜114.8cm 高知県指定文化財

笑い地蔵1
一号像

 

今回の出展されている仏像の中では最も有名といっていいであろうか。これら6体の地蔵は、遠目に見てもかなりの存在感であり、思わずまっさきにそこに行きそうになるほどの吸引力を持っている。何がそうさせるのだろう、と像を前に考えていたのだが、いろいろな理由があるような気がする。

 

笑い地蔵3
二号像

 

ひとつには、その造形と彫りの美しさ。つるりとしつつも独特な雰囲気を醸し出しているのはやはり造形がきれいだからだろうな、と想う。他にも、木の色や木目の美しさというのもあるだろう。そしてやはりその表情、そして顔の向きの不思議さも見逃せない。

 

笑い地蔵4
四号像

 

青木先生の説としては、この像はもともとは2列×3体ずつで縦に並んでいたのではないか、ということであった。向かって左に立っている地蔵たちが、向かって右の列の先頭の地蔵を見ているのではないか、というのである。それを裏付けるように、首を曲げている地蔵たちは、その曲げている角度が微妙に変化しているのだそうだ。首をまげている地蔵はみんな笑っているか微笑んでいる。曲げていない地蔵たちはまっすぐ前を向いて真顔。その説をもとに、青木先生は今回のようにV字型の展示を決めたのだそうだ(実際に2列にすると見えなくなってしまうためV字にしたという)。

 

笑い地蔵3
三号像

 

それにしても、いつまでも見ていたくなるほどに惹きつけられる仏像だ。左側の笑顔の地蔵たちにももちろん惹かれるが、右側の三号像は木目が美しく、ちょうど鼻の位置を中心に水紋のように広がっていて、正対していると吸い込まれるような気持ちになる。

 

笑い地蔵05
五号像

 

笑っている地蔵たちでは、五号像に惹かれる。楕円形を曲げたような口が、柔和な雰囲気をよく伝えてくれている。6号像は5号像と同じように笑っているのかと思ったら、よく見ると歯がしっかりと出ていて、これもまた印象的だ。

 

笑い地蔵6
六号像

 

 

 

何だか楽しそうだな、と、こちらも微笑んでしまうお地蔵さまたちである。

この部屋ではこの他にも掛け仏たちが展示されており、これもまた見事である。

 

へと続く)

 

【四国霊場開創1200年記念 祈りの道へ—四国遍路と土佐のほとけ—】

会期:2014年11月22日(土)〜2015年1月18日(日)
会場:多摩美術大学美術館(多摩センター)

入場料:300円

主催:多摩美術大学美術館/共催:高知県立埋蔵文化財センター/後援:四国八十八ヶ所霊場会、四国八十八ヶ所霊場会土佐部会、高知県仏教界、高知県仏教青年会、高知県、高知県教育委員会、高知新聞社、RKC高知放送/協力:高知県立歴史民俗資料館、おへんろ交流サロン、合同会社ベータ

監修:青木淳(多摩美術大学准教授)

http://www.tamabi.ac.jp/museum/inorinomichihe/

 

【多摩美術大学美術館(たまびじゅつだいがくびじゅつかん)】

〒206-0033 東京都多摩市落合1-33-1
TEL:042-357-1251
アクセス:京王相模原線・小田急多摩線・多摩モノレール 多摩センター駅より徒歩7分
駐車場:なし(多摩センター周辺の有料駐車場を利用 東1駐車場が最も近い 利用者割引きなし)