祗是未在

ソゾタケの仏像日記

安養寺【その2】(東京都日野市)— 藤原期の阿弥陀如来と不思議な大日如来立像

      2016/07/09

阿弥陀三尊像

※安養寺【その1】はこちら

新選組の鬼の副長・土方歳三は、私の住む東京都日野市出身である。その菩提寺が、その名も知られた高幡不動金剛寺であり、ここには丈六の平安仏である不動明王坐像および二童子像が安置されている。そして高幡不動から浅川を渡ったところにあるのが土方歳三の生家であり、さらにそのすぐ道路を挟んだ斜め向かいのあたりにあるのが安養寺である。もともとは高幡不動金剛寺の末寺であったという。

日野市では高幡不動があまりにも有名であるが、この安養寺は仏像を好きな人であれば、ぜひ一度訪れたいと言えるほどの仏像の宝庫である。とりわけ有名なのが、私が「サタデーナイト毘沙門天」と名付けた平安時代の毘沙門天立像(日野市指定文化財)であるが、それ以外にも素晴らしい仏像がたくさん安置されているのである。

毘沙門天像全体

ジョン・トラボルタばりの腰のひねりが見事なサタデーナイト毘沙門天

毘沙門天立像(平安時代)および薬師如来坐像(江戸時代)は、毎年元旦〜1月7日までの日野七福神の期間は間近で拝観できるが(昨年の1月、この安養寺を訪れたときのエントリはこちらから)、それ以外の仏像には予約することでお目にかかることができる。今回も事前に予約して訪れた。

本堂に入れていただき、外陣へと進むと、まず目に飛び込んでくるのは外陣脇に置かれた1台の大きなピアノである。見るからにフルコンサートサイズであり、なんとスタインウェイのものである。お堂にピアノ?と不思議な気分にもなるだろうが、ご住職の奥様は教育大の音楽専攻出身で、ご自身が弾かれたり、ピアニストや著名ヴァイオリニストを呼んでのコンサートをよく開いているという。私はそのことを知っていたのでピアノがあること自体は驚かなかったが、やはりこうしてフルコンのスタインウェイが鎮座している姿は非常に圧倒的な存在感がある。私も楽器を弾くので、ご住職と音楽の話で盛り上がる。

 

さて、内陣へと目をやると、少し遠いが内陣中央に阿弥陀如来の姿が見えた。

阿弥陀如来坐像(藤原時代)ヒノキ材寄木造 像高90.0cm  寄木造 東京都指定文化財

阿弥陀如来坐像 全体

黒い姿であるが、もともとは漆箔で、今もところどころに金箔が残るという。とても穏やかできれいな表情をしている。やや角張ったイメージがあることから、写真だけを見ていただけだと顔が大きめなのかと思っていたが、実際に見ると割と小顔である。

阿弥陀如来 施無畏

横から見ると、思ったよりも薄く、後頭部がぐいっと上に引っ張られているようにも見える。髪の生え際に金箔の残存が見える。

阿弥陀如来 横顔

衣が薄様で、ぴったりと足にくっついて腿やふくらはぎが浮き上がっているようにも見える。衣紋はかなり省略されており、膝の辺りなどは衣紋がない感じである。それだけにますますぴったり感が強調されているようにも見える。

阿弥陀如来 やや斜めから

こちらの像はほとんど補修の痕跡がないというから驚きである。関東における寄木造の最古様を示しているという。

 

脇侍の観音・勢至菩薩は江戸時代享保年間の作ということであるが、何とも言えず美しい。

観音菩薩 右斜め前から

とりわけ観音菩薩の微笑みは、美しさとともに暖かみも感じる。

観音菩薩

毘沙門天は普段は脇侍の後ろにひっそり…。七福神の期間はまさに晴れ舞台なのだな、というのがわかる。

毘沙門天

 

このお寺にはもう1体、非常に気になる仏像が安置されている。

大日如来立像(鎌倉時代)ヒノキ材寄木造 像高40.9cm 

大日如来立像

安養寺は有する仏像をまとめた素晴らしい冊子を制作して販売しているが、そこに載っているのを見て驚いて以来、ぜひ拝観したいと思っていた。大日如来の立像というのは初めて目にする。写真を見た時は、きっと江戸時代だろうな、と思った。というのも、江戸時代にはいろいろな信仰の形が存在して、不思議な仏像も多く作られているからだ。しかしこの像は鎌倉時代作という判定がされているから驚きだ。

大日如来立像 上半身

手は智拳印に結ぶ金剛界大日如来であるが、スッと、立っているのである。もともとこの形であったのか、修理痕はないのかなどはわからないが、いずれにしも、小さいながらも非常にインパクトも存在感もある仏像である。

 

この他にも、暗くて写真がうまく撮影できなかったのだが、不動明王および二童子像や、三宝荒神と妙見菩薩(寺伝では水神)を従えた八臂弁財天像も、小さいながらもかなり見応えがある。弁財天は中に弁財天の胎内仏を有するというから、弁財天 in 弁財天である。また、江戸時代作の千手観音が、きれいに修理を終えて、地下のホールに祀られているのも拝観させていただいた。

 

仏像とともに音楽の設備も充実していて、とりわけ、地下のホールはこぢんまりとはしているが、かなりのもので驚いた。ここで日本フィルコンサートマスターの木野雅之さんをはじめ、様々な音楽家を招いてのコンサートも行われているそうなので、ぜひ一度そちらも拝聴したいと思った。

 

【田村山安養寺(たむらさん・あんようじ)】

〒191-0024 東京都日野市万願寺4-20-8
TEL:042-581-3624
拝観:要予約(毘沙門天は1/1〜1/7の日野七福神巡りの際に薬師堂でも拝観可能)
拝観料:志納
アクセス:多摩モノレール万願寺駅下車徒歩5分
駐車場:境内、門から入った奥に5台分ほど駐車場あり(無料)
※エントリ「安養寺【その1】」の時点で存在していた第二駐車場はこの訪問時には解約されていました。七福神期間だけかもしれません。

 - 平安時代, 鎌倉時代, 如来, 菩薩, 天部, 地方仏, 仏像, 東京都, 多摩地区

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

本堂
願興寺(岐阜県可児郡御嵩町)— かつての繁栄を物語る素晴らしき仏像群

岐阜県はかつては文化薫る街道沿いの街であった、と、このブログでも繰り返し書くとい …

転読とのセッション
犬山薬師寺(愛知県犬山市)— ようやく会えた平安仏とグルーブ住職の寺テクノ法要

今回、年越しで帰省せずにこのタイミングで帰省したのは、この薬師寺でのご開帳に合わ …

壽宝寺千手観音像
壽宝寺(京都府京田辺市)—昼と夜の顔をもつ真数千手観音

奈良滞在も3日目となり、いよいよ今回の奈良旅のメインである東大寺の良弁忌の日とな …

十一面観音 顔近影 左側面
置恩寺(奈良県葛城市)―絶妙なバランスで立つ凛々しき観音

2日目は4つの寺院を巡る。 まずは奈良盆地の南西、葛城山の山裾にある置恩寺へ。 …

執金剛神像
東大寺法華堂(奈良県奈良市)—紛う事なき塑像の最高傑作・執金剛神像

良弁(ろうべん・689-773)とは、東大寺の開山として知られる奈良時代の高僧で …

内陣
極楽寺(東京都八王子市)― 微笑んで来迎!歯吹きの阿弥陀如来

  多摩地区は戦災などの影響が都心に比べると少なかったことで、多くの仏 …

左斜め前から
真覚寺 薬師如来倚像(八王子郷土資料館寄託)―白鳳時代の銅像薬師如来

多摩の仏像についても折に触れて書いて行きたいと思う。 東京都の西部・多摩地区は、 …

楽法寺山門
楽法寺(茨城県桜川市)— 引き込まれる異質な雰囲気の雨引観音

日本には数多くの巡礼というものがあるが、お遍路さんと並んで最も著名なのが百観音巡 …

千手観音脇手
菊蓮寺(茨城県常陸太田市)— 数奇な運命を辿ってきた5体の仏像

今年の冬は雪の降る日が多く、その量もかなりのものだった。私の住む東京都多摩地区の …

大智寺
大智寺(京都府木津川市)―橋柱で作ったという美しい文殊菩薩

同行の友人からの情報で、壽法寺から奈良へと戻る途中、木津川を渡ったすぐ南にある大 …