菊蓮寺から再び南下し、友部ジャンクションで今度は北関東自動車道を西へと走る。このルートは昨年11月に茨城県の五浦美術館へ行ったときの帰りにも通っている。そしてその時と同じように桜川筑西ICで降りた。
今回は南下し、桜川市南部の真壁町へと向かう。真壁町というと、戦国時代の猛将・真壁氏幹(まかべうじもと)の所領地であり、真壁城もあった地である。今は静かな地方の田園地帯といったところだ。そこにある清浄院というお寺が目的地である。
お寺の周辺の道はかなり狭く、ワゴン車では厳しいところもあったが何とか境内に到着した。筑波山が近い。
境内の桜がなかなかきれい。
本堂はなかなか重みのある雰囲気だった。屋根が堂々としている。
ご住職がガラス戸を開けて下さり本堂へと入る。
正面の大きな厨子は閉じられているが、こちらには薬師如来が入っているそうだ。開帳の予定はないそうで、ご住職も東日本大震災で扉がずれてしまった時に初めて目にしたという。
今回、こちらのお寺を訪れた目的は、正面の厨子にむかって右側の壇に安置されている3体の天部像である。
天部立像(おそらく増長天像)(藤原時代)カヤ材一木造 像高131cm 茨城県指定文化財
腕先を欠損しているので今ひとつ像容がわからないが、こちらは増長天として考えられているそうだ。内刳りのない古式な造形の一木造だという。顔を右に向けて腰を右に捻り、足を左に出しているところから、二天ではなく四天王の一つであったと考えられている。同行した仏友はそこを指摘していてさすがという感じであった。
大きく口を開けた憤怒相で、左手は三叉戟を持っていたことだろう。左足を踏み出すということからして、本尊の左前に配される増長天という解説には納得がいくものがある。
顔が小さくスタイルがいいが、やや胴長なところは否めない。獅子噛もなく甲冑はいたってシンプルだ。体や顔には胡粉のような塗装の下地が遺っているが、所々に赤い色が遺っている。これが当時のものか修復時のものかはわからない。
邪鬼がなんだかとてもユーモラスな表情だが、体の肉付きがとても良く、筋肉の表現も良い。
天部立像(おそらく広目天)(藤原時代) カヤ材一木造 像高122.4cm 茨城県指定文化財
こちらも同じく腕を欠損しているが、先ほどの増長天とは違って口を閉じてやや顎を上げた少し穏やかな表情である。増長天が左足を踏み出しているのに対して、こちらは肩幅くらいに開きつつも重心を右足に載せて、ひねるように上半身を左へやや傾倒するような形になっている。
目尻の小じわがちょっと気になるお年頃という感じだが、これは怒りの表現であろう。シブい表情でなかなかカッコいい。左手は下げているように見えつつもよくよく見ると肘で折れ曲がっており、この手で巻物を持っていたのだろう。右手はちょっと横へ行きすぎている感じもするが、こちらで筆を持っていたと思われる。
甲冑が同じであることや全体の状況からして増長天と同じ工房で同時代に作られたと見えるが、こちらの広目天の方が体や足の長さのバランスといい、脚絆の周辺の衣紋の造形、顔の大きさや表情など、造形としてはよくまとまっている。髻が欠損しているのでそれがあるとまた違って見えるかもしれない。
こちらの邪鬼はさらにユーモラスだ。水木しげるの作品にでも出てきそうな雰囲気である。
天部立像(伝毘沙門天)(藤原時代) 桂材寄木造 像高165.4cm 茨城県指定文化財
茨城県でも大型の天部立像だといい、損傷の状態からしても二天門などのような外部に置かれていたものではないかと考えられているそうだ。
寄木という技法からしても先述の2体よりは後の時代ということになるだろうが、時代の違いというよりはかなり独特な造形がそこかしこに見られる。色は彩色の痕跡かもしれないが、最も気になるのが革甲の締具であろうか。まるでバックルのようなものが並んだベルト状で、異質な雰囲気を感じさせる。腕がない状態だと何だか拘束服を着せられているようにも見えてしまう。
また、腰の下の側面の部分に八葉蓮華が造形されていたりもする。これは他には見られないものらしい。体の分厚さもかなりのもので、堂々たる像だ。
よくよく見ると、首の部分が陥没しており本来はもう少しだけ背が高いことになる。口を大きく開けた堂々たる表情で、口の中の彫りが深い。安置されている場所の関係で表情がもうひとつ見えないのが残念だ。
邪鬼もキングサイズで、頭がかなり大きい。
仏像好きにもほとんど知られていないお寺だと思うが、なかなか味わい深く素晴らしい天部立像であった。快く対応して下さったご住職には感謝である。
本堂前のお墓の前にあった三尊像(文殊菩薩?)がなかなかかわいかった。
【清浄院(せいじょういん)】
〒300-4404 茨城県桜川市真壁町白井582
TEL:0296-55-3170
拝観:要予約
拝観料:志納
駐車場:境内に2台ほどなら駐められる。ただしお寺への道は住宅街のかなり狭い道を行く必要があるため要注意
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