金剛輪寺(滋賀県愛荘町)— 湖東三山開帳② とてつもないパワーを秘めた「生身の観音」

西明寺を後にして、湖東三山の二山目である金剛輪寺へ向かう。

金剛輪寺を抱く秦川山

金剛輪寺を抱く秦川山

来た道を南へと少し戻り、途中で南東に折れて少しだけ入ったところに金剛輪寺の入口はある。駐車場はガラガラで、自分の車1台しか止まっていない状態。

駐車場

この看板はマンション系の色使いでちょっとイマイチかな?

ご開帳看板

上り口。緑がまぶしい。

上り口

本坊である明寿院名勝庭園は広々としてとても大きな庭園だった。

桃山時代の庭園ではシャクナゲがとても綺麗。宝篋印塔がシャクナゲに囲まれているのは、まるでいつもは無骨な武道一辺倒な男子が華やかな女子に囲まれて緊張しているようにも見えてなかなか微笑ましい。

シャクナゲに抱かれる宝篋印塔

金剛輪寺は石段が大変ということは聞いていたので覚悟はしてきたが、500mのダラダラと登る石段は確かに結構きつかった。

本堂への石段

しかし深い森の中であり、ハイキングのような感じだろうか。

新緑モミジ

とは言え、石段にはずっと千体地蔵が風車を持って並んでおり、途中には”千体地蔵ひろば”みたいなのもあったりして、正直ちょっと怖い。

千体地蔵

行く手に仁王門が見えてくる。ようやく着いた。

仁王門の提灯が見えた

本堂のある壇は西明寺のように広くなく、仁王門をくぐるとすぐ本堂の軒である。

本堂

本堂(鎌倉時代か南北朝時代で説が分かれる)は中世天台仏堂の典型例として国宝に、仁王門三重塔(いずれも室町時代)はともに国指定重要文化財に指定されている。三重塔は本堂の左手、さらに上段にそびえており、立地条件が厳しいことを物語っている。

三重塔

三重塔は荒廃して三重目はなくなっていたものを昭和に入って西明寺塔を参考に復興したという。仁王門ももとは楼門であったそうだ。

 

聖観音菩薩立像 詳細不明

聖観音菩薩

(ニュースサイトより)

衝撃的な姿だった。思わず声を挙げてしまった。

霊木信仰というにはかなりの未完成な雰囲気の荒彫り。垂下した右手などは円空仏をも彷彿とさせる感じだ。

行基が彫っている最中に一筋の血が流れでたため彫るのをやめたということから「生身(しょうじん)の観音」と称され、この伝説によって、お寺としては天平期という解釈をしているようだが、実際のところはなぜこのような状態だったのかはよくわかっていないようである。

細かく彫らずに斜めに鑿の跡が走っているようにも見えるが、腕などは比較的しっかりと彫られており、体だけがかなり未完成な感じである。頭の上の宝髻が捻ったように見えるところがまた面白い。円光背を頭の後ろにつけているが、これも当時のものだろうか。

情報を調べても詳細がほとんどでてこない。謎めいた仏像はたくさん見てきたが、ここまで謎めいた状態でかつ本尊、というのはなかなかお目にかかれるものではない。その姿を見ているだけでいろいろと語りかけてくるかのような、とてつもないパワーを秘めた雰囲気に圧倒された。

 

西明寺と同じく、こちらのお寺も須弥壇にはたくさんの仏像が載っている。

四天王立像(鎌倉時代) 国指定重要文化財

四天王像

多聞天像(左)と増長天像(右) (金剛輪寺で販売されている冊子より)

パッと見は平安時代のものかな、と思うような雰囲気の像であった。足の枘銘で1212年作とわかっているそうだ。バランスや造形ともに西明寺像の方が良いが、甲冑や腕のあたりの衣紋の流れに、やや共通するような造形もあったりして興味深い。

阿弥陀如来坐像(左・平安時代/右・鎌倉時代)国指定重要文化財

阿弥陀如来像

(金剛輪寺で販売されている冊子より)

“脇侍”のように、須弥壇の両サイドに半丈六の定朝様のダブル阿弥陀がいるというのはかなりすごいものがある。どちらもとてもきれいな彫りで、右は来迎印、左は弥陀定印を結んでいる。いずれも板光背である。これらは塔頭の本尊であったそうだ。

 

内陣の脇を通って裏の間である後陣に入ることができる。後陣では、厨子から出た形で立っているこちらの像に惹きつけられた。

十一面観音菩薩立像(平安時代)ヒノキ材一木造 像高172.4cm 国指定重要文化財

十一面観音近影

(金剛輪寺で販売されている冊子より)

かつては金剛輪寺の末寺のひとつ・岡寺の本尊であったと考えられているそうだ。衣紋はかなり簡素で省略していると見えるほどであるが、とにかく木の風合いと彫りが美しい。表情はぷっくりしていて、不思議ともち肌のような柔らかさを感じる。

立ち姿のバランスが非常にいい。何かをつまんでいたと思われる垂下した右腕に引っ張られるようにやや右へと体が傾き、それを体幹でバランスをとるように、クビは少し左へ傾げている。少しばかり重いものを右手で持っているかのようなその体のバランスと佇まいが何とも美しい。

ご本尊にはこの特別開帳期間を逃すと次はいつお会いできるかわからないが、この十一面観音だけに会いに来るだけでも十分に価値があると思う。

十一面観音立蔵

(金剛輪寺で販売されている冊子より)

 

後陣から内陣へと戻り、最後に聖観音をじっくりと拝観する。何度も見ても不思議な姿であるが、どうにも目が離せなくなってしまう。また縁があれば、と、手を合わせて本堂を辞した。

西明寺と同じく、金剛輪寺も山に抱かれたとても美しいお寺であった。

新緑と桜の名残

 

※湖東三山一斉開帳は、平成26年4月4日(日)〜6月1日(金)

松峰山 金剛輪寺(こんごうりんじ)

〒529-1202 滋賀県愛知郡愛荘町松尾寺874
TEL:0749-37-3211
拝観料:600円
拝観時間:8:30〜17:00
アクセス:JR東海道本線(琵琶湖線)稲枝駅からタクシー15分 一斉開帳の土日祝および紅葉の時期は河瀬駅からシャトルバスが運行される
駐車場:上り口のところに広大な駐車場がある(無料)

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湖東三山マップ

上り口

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