※安養寺【その1】はこちら
新選組の鬼の副長・土方歳三は、私の住む東京都日野市出身である。その菩提寺が、その名も知られた高幡不動金剛寺であり、ここには丈六の平安仏である不動明王坐像および二童子像が安置されている。そして高幡不動から浅川を渡ったところにあるのが土方歳三の生家であり、さらにそのすぐ道路を挟んだ斜め向かいのあたりにあるのが安養寺である。もともとは高幡不動金剛寺の末寺であったという。
日野市では高幡不動があまりにも有名であるが、この安養寺は仏像を好きな人であれば、ぜひ一度訪れたいと言えるほどの仏像の宝庫である。とりわけ有名なのが、私が「サタデーナイト毘沙門天」と名付けた平安時代の毘沙門天立像(日野市指定文化財)であるが、それ以外にも素晴らしい仏像がたくさん安置されているのである。
毘沙門天立像(平安時代)および薬師如来坐像(江戸時代)は、毎年元旦〜1月7日までの日野七福神の期間は間近で拝観できるが(昨年の1月、この安養寺を訪れたときのエントリはこちらから)、それ以外の仏像には予約することでお目にかかることができる。今回も事前に予約して訪れた。
本堂に入れていただき、外陣へと進むと、まず目に飛び込んでくるのは外陣脇に置かれた1台の大きなピアノである。見るからにフルコンサートサイズであり、なんとスタインウェイのものである。お堂にピアノ?と不思議な気分にもなるだろうが、ご住職の奥様は教育大の音楽専攻出身で、ご自身が弾かれたり、ピアニストや著名ヴァイオリニストを呼んでのコンサートをよく開いているという。私はそのことを知っていたのでピアノがあること自体は驚かなかったが、やはりこうしてフルコンのスタインウェイが鎮座している姿は非常に圧倒的な存在感がある。私も楽器を弾くので、ご住職と音楽の話で盛り上がる。
さて、内陣へと目をやると、少し遠いが内陣中央に阿弥陀如来の姿が見えた。
阿弥陀如来坐像(藤原時代)ヒノキ材寄木造 像高90.0cm 寄木造 東京都指定文化財
黒い姿であるが、もともとは漆箔で、今もところどころに金箔が残るという。とても穏やかできれいな表情をしている。やや角張ったイメージがあることから、写真だけを見ていただけだと顔が大きめなのかと思っていたが、実際に見ると割と小顔である。
横から見ると、思ったよりも薄く、後頭部がぐいっと上に引っ張られているようにも見える。髪の生え際に金箔の残存が見える。
衣が薄様で、ぴったりと足にくっついて腿やふくらはぎが浮き上がっているようにも見える。衣紋はかなり省略されており、膝の辺りなどは衣紋がない感じである。それだけにますますぴったり感が強調されているようにも見える。
こちらの像はほとんど補修の痕跡がないというから驚きである。関東における寄木造の最古様を示しているという。
脇侍の観音・勢至菩薩は江戸時代享保年間の作ということであるが、何とも言えず美しい。
とりわけ観音菩薩の微笑みは、美しさとともに暖かみも感じる。
毘沙門天は普段は脇侍の後ろにひっそり…。七福神の期間はまさに晴れ舞台なのだな、というのがわかる。
このお寺にはもう1体、非常に気になる仏像が安置されている。
大日如来立像(鎌倉時代)ヒノキ材寄木造 像高40.9cm
安養寺は有する仏像をまとめた素晴らしい冊子を制作して販売しているが、そこに載っているのを見て驚いて以来、ぜひ拝観したいと思っていた。大日如来の立像というのは初めて目にする。写真を見た時は、きっと江戸時代だろうな、と思った。というのも、江戸時代にはいろいろな信仰の形が存在して、不思議な仏像も多く作られているからだ。しかしこの像は鎌倉時代作という判定がされているから驚きだ。
手は智拳印に結ぶ金剛界大日如来であるが、スッと、立っているのである。もともとこの形であったのか、修理痕はないのかなどはわからないが、いずれにしも、小さいながらも非常にインパクトも存在感もある仏像である。
この他にも、暗くて写真がうまく撮影できなかったのだが、不動明王および二童子像や、三宝荒神と妙見菩薩(寺伝では水神)を従えた八臂弁財天像も、小さいながらもかなり見応えがある。弁財天は中に弁財天の胎内仏を有するというから、弁財天 in 弁財天である。また、江戸時代作の千手観音が、きれいに修理を終えて、地下のホールに祀られているのも拝観させていただいた。
仏像とともに音楽の設備も充実していて、とりわけ、地下のホールはこぢんまりとはしているが、かなりのもので驚いた。ここで日本フィルコンサートマスターの木野雅之さんをはじめ、様々な音楽家を招いてのコンサートも行われているそうなので、ぜひ一度そちらも拝聴したいと思った。
【田村山安養寺(たむらさん・あんようじ)】
〒191-0024 東京都日野市万願寺4-20-8
TEL:042-581-3624
拝観:要予約(毘沙門天は1/1〜1/7の日野七福神巡りの際に薬師堂でも拝観可能)
拝観料:志納
アクセス:多摩モノレール万願寺駅下車徒歩5分
駐車場:境内、門から入った奥に5台分ほど駐車場あり(無料)
※エントリ「安養寺【その1】」の時点で存在していた第二駐車場はこの訪問時には解約されていました。七福神期間だけかもしれません。
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